【森本】 まずは、安達社長が伊藤忠商事という総合商社で、ITベンチャーの投資事業に関わるようになった経緯をお聞かせください。
【安達】 伊藤忠商事のITビジネスは、かれこれ36、37年の歴史があります。伊藤忠商事は総合商社ですので、早くからコンピュータ、ITの世界でのビジネスに取り組んできていまして、商社の実務として必然的にIT関連のベンチャービジネスにも参入していました。ITの世界は、その当時からアメリカで非常に進んでいまして、現在でも日米間では大きな差があるわけですが、我々は70年代からずっとアメリカで新規商権の開拓を進めてきています。そういうなかで、アメリカで最先端のコンピュータの世界をいろいろ学んで、そのビジネスノウハウを日本に持ってきて、新しいビジネスを確立しようという動きが出てきたわけです。
【森本】 その時安達社長はどういうポジションにいらしたのですか。
【安達】 私は、アメリカのベンチャー企業と関係強化を進める業務に携わっていまして、その経験が買われてベンチャーへの投資事業のスタートに関わるようになりました。1992年に、ベンチャーへの投資ビジネスが実際にスタートしています。この90年代の前半が、私が実際にベンチャーキャピタルに関わるようになってきた時期でして、1995年には、伊藤忠商事のコアカンパニーである伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)に出向して、さらにベンチャー投資に本格的に取り組むようになりました。そこで、当時のCTCトップの指揮の下、新規の商権開拓や投資先の獲得に動いていたわけです。これが、私がベンチャー投資に関わるようになっていった経緯です。1990年代の10年間で、商権獲得型、事業提携型などの投資をIT分野に特化して携わりました。また、ベンチャーキャピタルは、アメリカで始まったビジネスモデルですが、そういうアメリカのいくつかファンドに伊藤忠商事として出資をしていたので、その経験を通してファンドの研究も進めていました。
【森本】 伊藤忠テクノロジーベンチャーズは、そうした歴史と経験値を踏まえて設立されたというわけですね。
【安達】 はい。伊藤忠商事の小林社長(当時・情報産業部門長)のリーダーッシップの下で、ベンチャー投資事業を専門特化して行なうことが決まりました。1999年頃にそのプロジェクトがスタートしています。そこで、ITベンチャーに投資するファンドの組成・運営する会社をつくろうということになっていくわけです。ただ、会社をつくるには、資金集めをしなければなりません。殊に2000年春にITバブル崩壊もあり大変苦労しましたが、最終的にグループ内外13社の機関投資家のご賛同を得て、伊藤忠テクノロジーベンチャーズが2000年7月に設立されたということです。
【森本】 その頃、日本ではもう本格的なIT時代を迎えていました。
【安達】 そうです。高い技術力と成長力を持つITベンチャーの育成が日本産業界の大きな課題になっていましたので、商社ならではの総合力を生かしたグローバル展開や経営支援を中心にしたベンチャーの育成に取り組んでいこうという趣旨で設立しました。 |