【山本】 仮にこれを自己資本で投資しようとすると、ただ巨大な資本金になっていき、投資からしばらくの間は当然損失が発生しますので、良い投資ができていたとしても結果が出るまで持ちこたえることができず、立ちいかなくなっていたかもしれません。この仕事の難しい点の一つです。だから、インキュベーションというのは当初想定はしていなかったのですけれど、続けていくうちにどんどんシードに近付いてきましたので、資本金を巨大にしないでやっていくということを、常に意識してきました。
【森本】 インキュベーションというのはベンチャーキャピタルで言うところのアーリーステージよりさらにアーリーというイメージですね。
【山本】 イメージはそうです。
【森本】 設立より前に参加するということですね。
【山本】 親しいインキュベーターから、アメリカには確としてインキュベーション業界というものがあるということをよく聞きますが、日本ではまだそこのところが圧倒的に弱いように思います。
【森本】 マーケットはあるのでしょうけれども、プレーヤーが少ないのではないでしょうか。
【山本】 そうなんです。私達は現在、事業開始からまだ2年半なのですが、これまでも新聞や雑誌、Webなどでたくさん取材をうけたのも、この業界では若手だったこともあるのでしょうが、超アーリーステージのところでサービス提供をしようという人たちが非常に少ないので珍しがられた、ということもあったのだと思います。
【森本】 その状況は2年半たった今変わりましたか。
【山本】 変わってはいませんね。この層で積極的に投資をしようとするベンチャーキャピタルは依然として少ないですし、インキュベーターが増えたという実感もありません。また、人材業界サイドも、私も以前勤めていた経験からわかるのですが、このステージではほとんど商売が成り立たないはずです。小さな規模の会社というものは人を採用するといっても最初はかぎられた人数ですし、資本金が500万円、1,000万円の創業期のベンチャーには100万円、200万円といった人材紹介手数料もなかなか払いにくいものですからね。
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