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VC vision
前編 後編
第1回 起業の原点と向き合って 後編
自ら起業したから見えてくるもの、
起業の現場に立ち続けるから見えてくるもの。
そして、PE&HR株式会社代表取締役、
山本亮二郎氏を超アーリーステージへと向かわせるもの。
それは、若者たちが起業にかける、ひたむきな真剣さと、
自分を成長させたいという強い思いである。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
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1人の起業家に対して複数の若手経営人材

【森本】 しかし、盛田昭夫青年も成長をすると、次の段階へ巣立っていってしまいますよね。
【山本】 その問題はつねに考えていることでして、どう担保しているかというと、本質的にはやはり仕事のおもしろさと自己成長ということだと思います。盛田さんもソニーを通じて世界的な大経営者になられましたよね。もう一つは高いインセンティブの設定をしています。投資によって会社の得られる利益と担当者の得られる利益を、ほぼ対等にしています。だから、できる人物は辞めないはずです。常に新たに起こるソニーや楽天と出会い続けることが可能ですし、求められれば、大きくなったソニーや楽天にサービスを提供することももちろん可能です。
【森本】 実際スタッフの採用はどのようになさっています。
【山本】 むずかしいところで、そこがすべての入り口なんですね。だから採用ツールとか手法とかは、もう日々いろいろとチェックして新しいものが出てくると必ず試すようにしています。場合によってはその人材会社の立ち上げに実際に関わっていくこともあります。
【森本】 採用にあたっての基準とはどのようなものですか。
【山本】 人を募るのも簡単なことではないし、その中から判断していくことはまた一層大変なことなんです。ただ本当のアーリーステージのベンチャーの世界は、もう嘘偽りなく、まさに今朝の2時、3時まで仕事していましたということの連続なんですよ。面接の時にはそれらを正しく話しますね。普通の人はそんなところに寄り付きたくないに決まっているはずですよ。基本的にはなるべくお引取り願うような面接をするんです。ところが、本当にたまにですね、眼がギラギラして身を乗り出してくる人がいるんです。そういう人とあらためてじっくりと話をするというやり方でしょうかね。
【森本】 盛田青年や本城青年がその中にいるわけですね。当然、年齢からすると転職組になるわけですが。
【山本】 今までは中途採用でやってきましたが、当社も一応3年弱やってきて、コアのメンバーも確立してきましたので、新卒採用を始めました。難しい仕事なのにどうして新卒を採るのですか、とよく聞かれるのですが、繰り返しですが、そもそも年齢はまったく関係ないと思っているわけですから、逆に新卒を採らない理由はありません。ビル・ゲイツもマイケル・デルも孫正義も、皆学生時代から起業しているわけですからね。また先ほどもお話ししたように、ベンチャービジネスは1人の起業家に対して複数の「若手経営人材」がいないと立ち上がっていかないのものです。起業(起業家)支援を行う上で、才能溢れる優秀な若手の採用は、最重要なテーマなのです。

起業学大学院の創設

【森本】 今後の事業展望などお聞かせください。
【山本】 これまでやってきた中で気が付いたことなのですが、経営学というものがあるがごとく、全世界的に、ある一定の人口、ある一定の商圏、そしておそらく証券取引所があるようなエリアであれば、起業学というジャンルが必ずあるはずだと思っているのです。国柄、土地柄、国民性といったものがあるのでエリアごとの特徴はあるとは思うのですけれど、起業のサイエンスというのが、世界的に普遍なものとして存在するのではないかというように思えてきたんですよ。人が一人で事を起こそうとする時に、起こりうる出来事。それが資本であり、人材であり、オフィスであり、それは結局万国共通なことであって、このモデルを持って世界展開していくことができるんじゃないかなと。そして、経営学にMBAがあるように、起業学に特化した大学院みたいなものを設立できないかと思っています。
【森本】 現状あるベンチャー講座とはまた違うんですね。
【山本】 よくある起業家を呼んで来てお話をしていただくというレベルのものではなくて、起業の現場で起きる出来事が何なのかっていうことをですね、理論と実践の両面から学べるものなんです。世界展開と大学設立、夢は広がっていきます。

インタビューを終えて

ベンチャーキャピタルを一言で定義することは難しい。そもそも定義自体がナンセンスなことである。山本氏が自らに言い聞かせるように語った「コンフリクトを完全に絶ってファンドの管理報酬にだけ依存する経営で、ベンチャーキャピタルは本当に経営支援ができるのか、という問いかけが、ベンチャーキャピタルのビジネスモデルに対してなされるべき」の言は、多くのベンチャーキャピタルが自問しなければならないテーマでもあろう。
では、日本型のベンチャーキャピタルとは何か。本連載での日本のベンチャーキャピタリストの方々との対話を通して、日本のベンチャーキャピタル(VC)のあり方(Vision)を考察していきたい。(森本紀行)

次号第2話(4月5日発行)は、グローバルベンチャーキャピタルの長谷川博和さん、マイケル・J・コーバーさんが登場いたします。

お知らせ

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