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VC vision
前編 後編
第2回 ベンチャーマインドよ、永遠なれ! 後編
1996年の設立以来、現代社会が必要とするイノベーティブな
ベンチャービジネスを世に送り出し、連続的に立ち上げた4つのファンドは
すべて高率のキャピタルゲインを獲得し続けている。
そして今、いよいよ、真のグローバルな展開、
海外での投資に積極的に取り組もうとしている。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
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インターナショナルな経営感覚

【森本】 それはぜひとも実現してほしいですね。実際、海外ベンチャーの案件には、いま、どの程度コミットメントできているのですか。
【コーバー】 現在、ハワイで3社投資しています。そのうちの1社は日本の企業を主力の顧客にしています。また、ファーストマーケットを日本で行っているカリフォルニアの会社にも投資しています。あと、イギリス、イスラエル、オーストラリアで2、3の案件に当たっているところです。で、おもしろいことに、ハワイとかオーストラリアでは、私たちを歓迎してくれるのです。どちらも域内のマーケットが小さいので、はじめから海外に目を向けざるを得ない実情がありますが、アメリカのベンチャーキャピタルにチャレンジすることは非常にエネルギーを必要とするので、私たちの話を積極的に聞いてもらえています。
【森本】 海外の案件を増やしていくというのは賛成ですけれども、日本の案件が、大きな額の投資対象にならなくなるということはありませんか。
【コーバー】 日本の案件も真剣に投資していくつもりですが、今のところ、日本では有望なベンチャーの数が比較的少ないですからね。また、経営参画するピュアなベンチャーキャピタルもそれほど増えていないです。だから、私たちはより高いパフォーマンスを得るために、ハードルを高くしていい案件にしか投資しないというスタイルを維持していきます。本当の意味でのベンチャーキャピタルを実現させるのであれば、海外投資をしないといけない、ということになると思います。
【森本】 アメリカやオーストラリアの会社を日本のマーケットで展開することと同様に、アメリカの巨大なマーケットに日本のベンチャーを立ち上げることも考えていらっしゃるのですか。
【コーバー】 確かにそれも可能ではありますが、日本は国内の市場で完結できてしまうのですね。だから、外国にいく必要を感じていない。ただし、これからは変わってくると思います。そこは、経営者にインターナショナルな感覚があるかどうかにかかわってきます。まだ日本のベンチャー経営者にはそのような人が少ないですからね。
【森本】 英語でプレゼンをしょうとする経営者がいないですからね。ところで、GVCのスタッフはベテラン揃いですね。
【コーバー】 そうです。アメリカでもベンチャーキャピタリストにはあまり若い人はいません。やはり、経験がものをいう世界で、自分のやったことを自分の成果として取る、というビジネスですからね。仕事ができなくなればあとはやめるだけで、跡継ぎをつくることもしていないですね。成功したり、失敗したり、実際は失敗のほうが多いですが、そこから自分自身で学習して作り上げていけるノウハウですからね。やはり、グレイ・ヘアー、熟年の年代になりますよね。
【森本】 業界として世代交代することはあっても、ベンチャーキャピタリストとしての世代交代はないですよね、という意味では、ひじょうに職人的な世界でもありますよね。
【コーバー】 そうですね。私たちにとってはベンチャーキャピタリストとしての「人材を育てる」というところまで頭が回らないですよね。パートナーシップのチームをどう構築して展開させるか、投資家に果たす責任をどうするかなど、ベンチャー案件を成功させることで精一杯ですからね。まあ、成功すれば、その分の見返りはありますから、新しいビジネスを立ち上げる醍醐味をおもしろく感じるのは間違いないです。なにより、ベンチャーの起業家たちはみんな一生懸命ですばらしい人たちですからね。

インタビューを終えて

真に社会が必要とする産業を育成するという、ミッションそのものがひじょうにドメスティックなものであるベンチャーキャピタル。1996年の設立時、みずからの屋号にグローバルの名を冠したのは、そこに、卓越性、先見性、そして何よりも進取の気概を込めたものであろう。しかし、輝かしいトラックレコードを残してきたこの10年の間、産業そのものが劇的な変質を遂げ、グローバル化が大きく進行し、ベンチャーキャピタル自体のグローバル化も時代の必然となっている。「ヒト・モノ・カネ、そして"知"が集まる」という東京のローカリティに立脚してグローバル展開を図ろうとするグローバルベンチャーキャピタルのスタンスに、ベンチャーキャピタルの本質的変革を見る思いがするのである。(森本紀行)

次号第3話(5月3日発行)は、グロービスキャピタルパートナーズの仮屋薗聡一さんが登場いたします。



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