起業家・ベンチャーキャピタル・投資家を繋ぐコミュニティ・マガジン

VC vision
前編 後編
第5回 ベンチャーに針路をとれ 前編 ネットワークという資源
グループ全体の優れたネットワークと資金調達力を武器に、
銀行系ベンチャーキャピタルとして
よりポジティブな展開を続けている、りそなキャピタル株式会社。
その投資活動で何を目指しているのか。
東京営業本部統括役員の鈴木基広氏、
投資開発部第二、第三部長の三木康雄氏、
投資開発第二部シニアキャピタリストの山田芳春氏に 話をうかがった。
interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
投資先一覧パートナー
培ってきたネットワークを活用する

【森本】 りそなキャピタルの投資展開についてお話をうかがいたいのですが、現在はどういう体制で取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
【鈴木】 弊社の投資部門は大きく分けて、投資部と投資開発部の二部門があります。投資部は、原則的にはりそな銀行の各支店を担当しておりまして、各支店の取引先に投資案件にふさわしい企業があった場合に、投資活動を行っていくものです。また、投資開発部は、市場からファインディングルートを行って、投資先を探してくる部署になります。
【森本】 二つの部門はどのような比率になっていますか。
【鈴木】 人数は、圧倒的に支店担当が多いです。というのは、りそなキャピタルが戦略的な転換をする以前に投資を行ってきた企業をまだ数多く抱えていますので、まずはそれをきっちりと管理していかなければなりませんから。しかし、実際の投資の数や金額では、投資開発部のほうが大きくなっています。りそなキャピタル全体で見ますと、7割から8割が銀行本体からの紹介ではない案件に投資しています。
【森本】 それぞれの部門で扱う案件に特徴はあるのでしょうか。
【三木】 基本的には、ベンチャービジネスであることには違いはないのですが、投資開発部では、どちらかというとR&D分野のバイオとか半導体が多くなってきています。逆に、投資部では、もともと銀行と取引のある企業様ですから、売上もあるし、実績のある企業が多くなっています。
【鈴木】 さらに投資開発部が発掘した案件は、リード投資が多いという点で、関わり方がまったく違ってきます。
【三木】 銀行本体の紹介によるお客様の場合は、まず支店に相談に行って、それから弊社にお越しになるというパターンが多くなりますので、役割としては補完的にならざるをえません。しかし、投資開発部の案件はハンズオンの展開が増えることになります。
【森本】 案件発掘の方法論、ポリシーに対してはどのようなお考えをお持ちですか。
【三木】 ベンチャーキャピタルには、発掘、審査、成長支援という三段階がありますが、発掘はもう、足で稼ぐしかないですね。それに加えていえることは、今まで手がけてきた案件を通して培ってきたネットワークを活用することですね。ベンチャーキャピタル同士、証券会社、監査法人をはじめとした同業者間のネットワークとそこから得られる情報、さらには、親会社である銀行を通じた情報と、りそなグループのネットワークも大きな強みといえます。
【森本】 足で稼ぐ、といっても闇雲に歩くわけにはいかないですよね。
【三木】 でも、はじめのうちは闇雲に行くぐらいでないと発掘の途は広がりません。とはいっても、組織としてはそれなりに経験を積んでいますから、今、どういう業種が注目を集めているのか、どの業種が衰退しているのか、ということは事前に把握できていますから、ある程度狙いを絞り込んでから積極的に働きかけるというスタンスを取っています。

最後はやはり経営者の人間力で決まります

【森本】 投資案件の選別と審査の基準はどのようなものですか。
【鈴木】 基本的なガイドラインとして、ポートフォリオマトリックスというものを作成しています。一方の軸に業界の成長性を3つにランク分けし、もう一方の軸に企業の優位性を3つにランク分けしています。それを掛け合わせると9つのセルができるわけですが、そこに担当者が各自の判断でランク付けをした企業名を記入していきます。それを審査調査部が検証して、最終的に協議会においてすり合わせをしてから投資金額を決定しています。
【森本】 業種ごとに専任の担当者をおいたりするということもありますか。
【三木】 現在は、それは行っていません。ただし、得意な分野はある程度出てくるでしょうし、専門性がないと担当できない分野もあります。バイオや半導体などはその分野が得意な人が担当していくということはあります。そのためにも、若い人や経験のない人には研修をして各分野に通じるように育成をしています。また、特殊な分野に関しては、アドバイザリー契約をして、外部からの技術評価を受けるようにしています。各分野に通じたキャピタリストの養成、育成は重要な課題です。
【山田】 銀行系のベンチャーキャピタルでは、担当に業種の設定をしないほうがいいと思います。銀行の一番の強みは、すべての業種と幅広く取引ができることですから。しかし、専門的な掘り下げを行わない分、案件に対して中途半端にわかった気になることが一番危険なので、注意しなければいけません。
【森本】 投資の決定に際しては経営者の考え方や質を見極めることが非常に重要になってきます。
【山田】 そのためにも、投資するまでできるだけ長くお付き合いさせていただくことを心がけています。いきなり提出されてきた事業計画書を2カ月で判断することは非常に無理がありますが、先様と半年間お付き合いしたあとに出てきたものであれば、スピーディかつ精緻に判断できますからね。
【森本】 おひとりで一年間に何件くらい回られるのですか。
【山田】 先日たまたま名刺の数を数えたのですが、約2年半で、だいたい1,000枚くらいありました。つまり、それだけの数の方々とお会いしているということになりますね。
【森本】 かなりの数ですね。このような多数の案件の中で、投資先として決定するのにどのような点を重視されていますか。
【三木】 売上がまだない段階で企業がきっちり事業計画書をつくってきても、実際は、あまり判断材料にはならないですね。ビジネスモデルは、途中で変わるケースのほうが多いですからね。最終的にはやはり「人」ですね。よほど素晴らしいビジネスモデルであるならば別ですが、そういうものはこれまでに数えるほどしか出合ったことがありません。R&D系の企業であっても最後はやはり人、経営者の人間力で決まります。
【森本】 これまで投資を決断した企業の経営者に共通点している資質というものはありますか。
【三木】 一つだけいえるのは、自分のポリシーといいますか、芯をしっかりと持っているかどうか、ということですね。これだけは譲れない、というものを持っているということですね。それに、ビジネス環境の変化に臨機応変に対応できる柔軟さを合わせもっていることも重要ですね。
【森本】 順調に公開までこぎつける社長というものは皆無ということですね。
【三木】 経営者というものは、倒産の危機にあったり、ビジネスモデルの変更を余儀なくされたりというターニングポイントとなる時期を必ずどこかで経験するものです。こうした変節を乗り越えて公開にこぎつけた社長からは、芯の強さや変化への対応力といったものが自然と伝わってきます。




HC Asset Management Co.,Ltd