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VC vision
前編 後編
第5回 ベンチャーに針路をとれ 前編 ネットワークという資源
グループ全体の優れたネットワークと資金調達力を武器に、
銀行系ベンチャーキャピタルとして
よりポジティブな展開を続けている、りそなキャピタル株式会社。
その投資活動で何を目指しているのか。
東京営業本部統括役員の鈴木基広氏、
投資開発部第二、第三部長の三木康雄氏、
投資開発第二部シニアキャピタリストの山田芳春氏に 話をうかがった。
interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
投資先一覧パートナー
顧客ネットワークを成長支援に活用

【森本】 一方、投資家の方々に関しては、その対象を広げる予定はございますか。
【三木】 投資家の方々の幅を広げることはまったく考えていません。
【森本】 りそなグループという背景で資金調達をして、りそなグループが持つ顧客基盤を使った成長支援を一貫して行っていこうというわけですね。
【三木】 はい。そういうことです。
【森本】 りそなグループの機能をモデルにした展開を行っていくことで、りそなグループにとってもメリットがあり、りそなキャピタルにとってもメリットがあるということになりますね。
【鈴木】 我々が実現したいのは、成長支援を通じたリターンの向上なのです。だから、外部の出資者としてリターン追求型の人には来てほしくないのです。もちろん、我々はパフォーマンスを上げる自信はありますし、実際、上げていますけれども、第一義に重要なのはあくまでも成長支援なのです。
【森本】 りそなグループが、メガバンクグループと比べると多くの機能をもっていないこととも関係がありますね。
【三木】 おっしゃるとおりです。たとえば主幹事をつとめるための証券会社を持っていません。そのために、戦略的に、特定のところとガッチリ組む事業はやらずに、等距離外交策をとっています。
【森本】 リターン狙いの出資者は必要ないということですね。
【三木】 要するに、もうすこし待って、たとえば1年後に公開したほうが、企業価値がもっと上がっている、ということもあると思うのです。それを、IRRを上げるために無理をして、なんとしてでも今年公開しようというようなことはしない、ということです。外部出資者の方々には、そこのところを理解して賛同いただくことが原則になるということです。
【森本】 なるほど。では、そのりそなグループのネットワーク活用の最大のメリットはどういうところにあるとお考えですか。
【三木】 ネットワークを持つことは、発掘にあたっての利点であることはもちろんですが、一番大きい本当のメリットは、目利きや成長支援に強みを持てるところなのです。投資案件の企業について他の同業者の意見を聞いて確認することもできますし、また、すでに上場されている投資企業様にご紹介いただける企業は、その時点でその投資企業様から評価されている優良企業でもあるというわけですから。ネットワークは、こういう目利きにも活用できるのです。それから、成長支援をするときにも、投資企業の業績を上げるために、業務提携したり、販売ルートを確立したりというときにネットワークはものすごく大事なものになります。また、案件によっては、20億円、30億円というかなり大型のファイナンスを実行しなくてはいけない場合がありますが、当然、弊社だけでの資金提供には無理がありますので、他のベンチャーキャピタルをご紹介したり、証券系、銀行系、生保系などでの事業発表会のアレンジをお手伝いしたりすることもあります。こうしたことができるのも、りそなグループで形成しているネットワークの力だと思います。
【森本】 銀行の顧客ネットワークそのものも成長支援に活用していかれるわけですね。
【鈴木】 銀行系ベンチャーキャピタルのハンズオンは、企業の経営者の方々に対してワンストップで、きめ細かく、効率よく、大規模に展開できるところに特徴があると思います。特にベンチャー企業で一番大変なのは、実は営業展開です。ですから、営業斡旋は一番大きなニーズになりますから、1,000社以上あるネットワークの中から顧客になりそうな企業をご紹介していくことも行っています。


インタビューを終えて

「弊社の収益源は投資先の成長にある」という経営理念の下、成長支援を切り口に独自の道を歩み続けるりそなキャピタル。そのための自助努力の精神は、従来の銀行補完業務から脱したベンチャーキャピタル事業の展開を目指し、スタッフも銀行からの出向を仰ぐことなく、自社の基準での採用を実施している。さらには、りそなグループのネットワークと資金力をベンチャーの成長支援に有機的に結び付けることで、成長支援の中身を幅広く、また、高い質で実現できる優位性を保持するに至っている。日本のファイナンスの歴史を振り返ったとき、本来的に高いポテンシャルをもっているだけに、銀行系ベンチャーキャピタルが真にベンチャーの視点と精神を持ちはじめたことは、大いに歓迎するべきことである。(森本紀行)

次号第6話(8月2日発行)は、日興アントファクトリーの谷本徹さんが登場いたします。


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