【森本】組織的な対応が求められているということですね。
【豊貴】そうです。ジャフコの場合は、もともとパートナーシップではなく法人として投資活動をスタートしており、さらにジャフコ自体を上場させ不特定多数の株主を抱えていることや、多様な出資者を抱えているなど、海外のモデルや、一般的に語られているベンチャーキャピタルとは根本的に違うところがたくさんあります。そういう意味ではジャフコがベンチャーキャピタルと呼ばれること自体、純粋にベンチャーキャピタルを標榜されているところに申し訳ない気もしていますし、現在のジャフコの目指す方向性を考えると、そう呼ばれることに違和感も覚えます。
【森本】海外におけるプライベートエクイティファンドとも大きく立ち位置や成り立ちが異なっていますね。
【豊貴】はい。しかも、ジャフコの場合は出資者も広範囲にわたっていて、特定の機関投資家だけではなく、事業会社や個人に広くまたがっています。また、我々は全ての出資者に対して持続的に安定したパフォーマンスを出していくこと、それをジャフコがゴーイングコンサーンであり続ける限り続けていくことが事業の目的なのです。パートナーシップ型のベンチャーキャピタルが、特定の個人に依存し、その人が非常に元気なときに最大のパフォーマンスを出しますというスタイルでアピールして、投資家がそれを見極めて資金を出していく形態とは根本的に違うわけです。米国でも、そのようなかたちで際立ったパフォーマンスを上げているところは、ほんの一握りです。それ以外は新たなファンド設立すら厳しい状況のベンチャーキャピタルが大半なのが現実です。しかもパフォーマンスの良いベンチャーキャピタルのファンドに出資ができるのは既存の出資者に限られ、日本を代表する機関投資家もアクセスできないのが現状ではないでしょうか。
【森本】パートナーシップとかハンズオンを前面に出しているベンチャーキャピタルとは運用の仕方が、かなり違うわけですね。
【豊貴】ええ、多くの出資者から多額の運用資金をおあずかりする以上、我々の投資スタイルはハイリスクハイリターンです、常にホームランを狙っています、当たらなければごめんなさい、と言うわけにはいきません。パフォーマンスが悪くてファンドも集まらなくなったから廃業しますという無責任なことも当然できません。特定のパートナーがいなくなったから投資を止めるわけにもいきません。あらゆる投資機会を捉え、常に持続的安定的なパフォーマンスを出していくための投資戦略が求められます。海外でもベンチャーキャピタルに比べてパフォーマンスの安定しているバイアウトファンドやセカンダリーファンドに資金が集まるのも、そのような出資者ニーズが背景にあるのかもしれません。
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