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VC vision
前編 後編
第10回 ベンチャーマインドの求心力 前編 ハンズオンに強みを持つ
2000年の設立以来、安定した業績を残し続ける大手商社系ベンチャーキャピタルの
伊藤忠テクノロジーベンチャーズ。
伊藤忠商事の情報部門が70年代初めからアメリカ・シリコンバレーの
ベンチャー企業の支援・育成に関わってきた事業を土台に、
ITビジネスに特化したベンチャーキャピタルとしてスタートしたものである。
安達俊久代表取締役社長が、設立から7年目を迎え、
これまでのビジネスを振り返りながら、
今後新たに進むべきビジネス展開について語る。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
投資先一覧パートナー
メンバー全員が情報産業の営業出身である

【森本】 ファンドは、2000年の夏からこれまでに何本くらい組成されているのですか。
【安達】 1号ファンドは、今年春でほぼ投資を完了しております。今年3月には、昨年の初頭から企画していた2号ファンドがスタートしました。2号ファンドの特徴は、1号ファンドの実績をベースに、外部金融機関様の出資比率が高くなっています。もちろん、これらのファンドは、ITに特化しています。
【森本】 ファンドの正式名称は何というのですか?
【安達】 テクノロジーベンチャーズ投資事業有限責任組合で1号、2号と続いています。
【森本】 出資者はどういう人たちですか。
【安達】 都銀、生保、損保などですね。2号ファンドを始めるにあたっては、伊藤忠商事の情報部門の持つリストから70〜80社に募集をかけています。もちろん、その全部が出資してくれたわけではありませんが、80億円ほどの投資資金を調達しています。ただ、まだまだ各社ともベンチャー投資ファンドには、あまり資金を出す雰囲気がないので、理解を得るのが苦労する点ですね。
【森本】 出資者の方々が投資を決定した要因は何だったのですか。
【安達】 まず、我々メンバー全員が情報産業の営業出身であるということで、ITに特化した経験者で占められていることが一つです。そこに信用が生まれています。ベンチャーキャピタルそのものは金融事業ですが、情報産業の営業に関わるハンズオンに強みを持つベンチャー投資ファンドであることに賛同いただけたものと思っています。伊藤忠商事時代からの30数年にわたるITビジネスの蓄積で構築したネットワーク、リソースを最大限に使っていける点も評価いただいていると思います。

「どうしても必要なもの」でないと売れない

【森本】 ファンドレイズのポリシーもその点に重点が置かれているわけですね。
【安達】 他のベンチャーキャピタル、インベストメントと弊社を比べた時の特徴は、営業支援、事業企画開発支援に強みがあることです。ですから、レイトステージ中心の投資はあまり行っていません。アーリーステージで積極的にリスクをとってリードを実行しています。その点で、ベンチャー起業家からも評価をいただける投資ができていると思います。ただ、メンバーの人数に制限がありますので、投資先全社に対して同様にハンズオンができるわけではありません。投資担当者一人が4、5社を受け持てれば良い方と考えています。弊社投資先の約半数に関しては、ともに出資している他のベンチャーキャピタルと連携して役割分担をしております。ただ、アーリー中心の支援は、他のベンチャーキャピタルでもやっていますが、ITに特化した営業支援となると結構難しい面があるわけです。我々はグループ内には、そういう営業支援や技術評価できる人間がたくさんいて細かい対応ができる点が、他にない特徴と言えます。
【森本】 投資先企業の評価をされるとき、どのようなポイントを重視していますか。
【安達】 テクノロジー、マーケット、経営者の3本柱になりますが、90%は経営者の評価においていて、そこが一番大きな比重になります。テクノロジーの比重は10%以下です。
【森本】 ITに特化していながら、技術評価の比重が10%以下とは、少し驚きですね。
【安達】 ええ。ITですから、経営者も技術系の人が多いので、技術評価の比重が低いことに非常に怪訝な顔をされることがよくあるのですが、我々は、会社経営について判断をしているのであって、そこは、やむを得ないことだと思っています。基本的には、売れる技術がいい技術なわけでして、たとえ今までにない質の高い技術であっても「あったらいいな」では販売にはつながりません。「どうしても必要なもの」でないと売れないのですね。もちろん、「風が吹く」というプラスアルファの要素もありますが、人がお金を出してまでも必要とするものが、いい技術になると思います。
【森本】 その技術をどう売るかという経営の問題は、また別なことですからね。
【安達】 ですから、経営者の方にいつもお話ししていることは「あなたはゲームをつくる先発ピッチャー」なんだということです。どんなに周りに技術的に優れた選手がいても、ピッチャーが打たれにくいボールを投げなければゲームは成り立たないわけです。最終的に企業経営を成功させるには、テクノロジー以上に経営者の資質が非常に大事になってくるのです。

後編 「ビジョン、ミッション、パッション」(12月20日発行)へ続く。


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