【森本】 伊藤忠テクノロジーベンチャーズの投資についての体制と考え方をお伺いしたいと思います。まず、スタッフの陣容はどのようになっていますか。
【安達】 現在、私を含めて4名が常勤役員をしていますが、そのメンバーが投資責任者になります。次にサポート人員として5名がいます。この5名は近い将来、投資責任者になる人材です。以上9名の体制で運営しています。ほかに、3名のバックオフィスの事務担当がいます。
【森本】 皆さん、生え抜きの方ですか。
【安達】 この9名は、一人を除いてみな伊藤忠商事の出身です。経験から言うと16〜17年の者が主になります。そして、一人はCTCからの出向です。全員が、IT情報産業でビジネス経験を積んできた者でして、これが、特徴であり、強みだということです。
【森本】 商社系ベンチャーキャピタルとして、三井物産系とか三菱商事系などの大手商社と比較して、ネームバリューで劣るということはありませんか。
【安達】 住友商事が出資しているベンチャーキャピタルや、三井物産系、三菱商事系のベンチャーキャピタルとは、それぞれが同じベクトルを持った競合関係にあるのは確かですが、問題は、いかに投資先の企業価値を高めて成長軌道に乗せるかにあるわけです。ですから、住友商事系や、三井物産系にしても、一緒にやりましょうということであれば、問題なく一緒にやることになると思います。あくまでもキャピタルゲインを得ることが最大の目的ですから。そのための最良の方法であるのなら、それでかまわないわけです。我々は伊藤忠商事の情報部門からは独立していますから、決して伊藤忠グループとしての利益を守ろうという観点からは行動していません。むしろ、我々がベンチャーキャピタルを運営するに当たって、伊藤忠商事の管理下にはないということは、投資家や投資先の方々にも充分にわかっていただいていることでもあります。
【森本】 ベンチャー企業の経営者は、株主の名前にこだわるところがありますが、事業に不都合が生じるなどのケースはありませんでしたか。
【安達】 それは経験したことがないですね。ベンチャーキャピタルというのは、非安定株主で、上場すれば売却することになりますが、そういう非安定株主であっても、株主に伊藤忠という名前が入っていることに対しては、ベンチャー企業からは優位に感じてもらっていると思います。
【森本】 なるほど。ITに特化していることで他のベンチャーキャピタルとの棲み分けもできていると考えていいですね。
【安達】 特化型ファンド、ゼネラル型ファンドと言われますが、日本では銀行系も証券系も全部ゼネラル型なので、ゼネラル型のほうが多いと思うのですが、ゼネラル型ですべての分野をカバーするといっても、結果的にITが多くなっていると思います。また、ITはベンチャーが起業しやすいということもありますから、4割ぐらいはIT関連企業への投資になっていると思います。我々がITに特化しているといっても、他のベンチャーキャピタルとの競合部分は、実際は大きいのですが、しかし、我々のパートナーシップは高い専門性をもつので、現場では競合しているような実感はあまりありません。 |