【森本】 案件への投資の最終判断は、担当者それぞれの裁量にまかされているのですか。
【安達】 投資判断は計数化してできるものではないですね。たとえば10項目のチェックリストがあって1項目5点の50点満点だとして、40点以上なら投資するとしたら、それは簡単なのですが、たぶん、それでは永遠にパフォーマンスを上げられないと思います。やはり、先ほどお話しした感性、感受性といった"投資眼"というものが必要です。最後の「こうだ!」という決定には、感覚的な部分が大きいものです。だから、リスクはあります。それでも、技術評価や市場調査において好材料が揃い、90%以上は決定だという段階まできても投資に至らなかった案件もあります。最後の一押しのところで、決断できないという場合もあるわけです。その代わり、逆に、いったん投資をしてパフォーマンスが上がらない企業に対しても、我々は全責任をもって支援していきます。これは契約にもとづくビジネスですから、当然なことでもあるわけです。
【森本】 IT関連事業にもさまざまなものがありますが、伊藤忠テクノロジーベンチャーズが投資する案件には、何か特徴はありますか。
【安達】 比較的バランスよく投資体制を構築していますので、ソフトウェア、ハードウェア、コンテンツ、半導体、ITサービスなど、幅広く対応しています。結果的に、サービス関連が多く半分くらいを占めています。
【森本】 ハンズオンで企業価値を高めるためにとられている方策はどのようなものがありますか。
【安達】 ベンチャー企業の多くは、お客様を把握できていない場合がよくあります。お客様との接点を持っていないため、いかに、アクセスポイントを増やしていくかが、戦略的にも重要になります。また、社内に人材がそろっていないことも弱点としてあります。そのためには、そのベンチャー企業にマッチしたパートナーを見つけていくことも必要です。
【森本】 御社の場合、コーポレートベンチャーキャピタルという位置づけにもなると思うのですが、伊藤忠グループのカラーが色濃く出ている点は組織構成の面で影響を及ぼすことがありますか。
【安達】 そうですね。今後、人材の多様化が課題となります。ですから、外部採用をすべきと考えていまして、2、3年先の中期目標としては、組織構成を外部採用と出向者で半々の比率にしていこうと考えています。将来的には、社長が外部出身の人間になることも充分に想定されます。
【森本】 採用人材の経歴はどういう点を重視していますか。
【安達】 ベンチャーキャピタルの経験者であるに越したことはないのですが、それ以上にITに興味を持って、ITビジネスの経験がある人を優先したいですね。ITに対する感覚的なものが備わっていることのニーズが高いですね。 |