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VC vision
前編 後編
第12回 ブレイブ・ニュー・ベンチャー 前編 積極的なリスクテイク
インターネット分野のベンチャー企業としてスタートした株式会社サイバーエージェント。
2006年4月に、株式会社サイバーエージェント・インベストメントを
グループ会社として立ち上げ、ベンチャーキャピタル事業に本格的に乗り出した。
サイバーエージェントはどういうベンチャーキャピタル事業を展開しようとしているのか、
その活動の目的と理念について代表取締役社長の西條晋一氏にお話を伺った。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
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インターネットに特化したベンチャーキャピタル

【森本】 まず、サイバーエージェントでベンチャーキャピタル事業をスタートさせた経緯からお聞かせください。
【西條】 これまで、サイバーエージェントは大きな買収をせず、自分たちの手で生んだ事業を育成する道をとってきました。この「小さく生んで大きく育てる思想」と「事業の育成ノウハウ」をベンチャーキャピタル事業に活かせないかと考えたのが事業開始のきっかけです。まずはじめに、2004年の10月、1本目のファンドである「サイバーエージェントCA-T投資事業有限責任組合」を18.1億円で組成しました。その後2006年4月に「サイバーエージェント・インベストメント」というベンチャーキャピタルを設立してベンチャーキャピタル事業を本格的に展開するようになりました。
【森本】 サイバーエージェントのベンチャーキャピタル事業は、具体的にどういう活動を行っているのですか。

【西條】 我々は、インターネットビジネスに特化してベンチャーキャピタル事業を行っています。我々は本業でインターネットビジネスのほぼ全域をカバーしていますから、そうした事業の目利きとか、インキュベーションは得意分野になります。インターネットビジネスはまだ業界そのものの歴史が浅く、今後もさらなる成長が期待できます。インターネットビジネスの経験豊かな我々が、「経営者の能力」、「事業の将来性」、「想定しうるリスク」など成功に必要な要素を緻密かつフェアに判断し、資金提供を行っています。
【森本】 投資ポリシーには特徴はあるのでしょうか。
【西條】 投資ポリシーとしては、やはり、インターネットビジネスに特化するということが第一です。つまり、自分たちがわからないものには原則として投資をしないということです。たとえば、インターネットビジネスに関するものでも、セキュリティの会社とか半導体の会社などがたまにあるのですが、こういった分野については、我々はあまり得意ではないので、投資に至らないケースが多いですね。我々が得意なのは、C to C、あるいはB to Cのサービス系事業です。


現地に足場を持つパートナーと組むファンド

【森本】 ファンドは全部で3本ありますが、ほかのファンドはどのようなものでしょうか。
【西條】 2本目のファンドの「投資事業組合CAJ-I」は、ファンドの趣旨を1本目とは大きく変えて、基本的にセカンダリー投資を行うファンドにしました。これは2005年9月に40億円の規模でスタートしています。また、3本目の「CA JAIC CHINA Internet Fund」は、中国に特化したファンドにしました。スタートは2006年4月で、当初はファンド総額520万ドルと比較的小さなものでしたが、今後は3,000万ドルくらいまでに増やす予定で、中国への投資も積極的に行っていきます。これら2本のファンドは、いずれも日本アジア投資様との二人組合で当初組成したもので、お互いの強みを活かしたものになっています。
【森本】 中国以外で次の展開を考えている地域はどこですか。
【西條】 興味があるのは、韓国ですね。すでにインフラは整っていますし、オンラインゲームにおいては、ユーザーのリテラシーが高く、国際的にも先進地域ですからね。韓国のブロードバンドなどでの先進的なサービスには非常に興味があります。
【森本】 韓国のベンチャーも、この「CA JAIC CHINA Internet Fund」で投資していかれるのですか。
【西條】 これは、チャイナと銘打っていますので、広くとっても台湾、香港あたりまでですね。韓国で投資をするとなると、別のファンドになると思います。ただ、土地勘がわからなかったり、向こうの会計とか税制の仕組みも知らないといけないわけですから、現地に足場を持つパートナーがいないと難しい問題があります。いずれにしても、パートナーと組む形のファンドになるでしょう。
【森本】 2本目のファンド「投資事業組合CAJ-I」の40億円という規模は、結構大きなものですよね。
【西條】 そうですね。このファンドは、セカンダリーに特化したファンドで、シェアも比較的大きく取っていこうと考えているもので、1社当たり5億円から10億円を投資していこうという趣旨になっています。すでに20億円の投資を行っています。
【森本】 今後具体化しそうなファンド計画はあるのですか。
【西條】 先ほどお話しした韓国、それから米国向けのファンドを組成する可能性はありますが、国内では1本目のファンドの組入れは完了していますので、今後はセカンダリー以外はサイバーエージェント本体で投資を行っていき、サイバーエージェントとの事業アライアンスなどをより一層強化していきたいと思っています。





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