【森本】 松下電器のコーポレートベンチャーは、どのような技術に投資しているのでしょうか。
【樺澤】 当社は、インターネットが普及する中で、デジタル家電をネットワークでつないでいこうという大きなテーマを持っています。コンセプト的には、ほぼできあがっていますが、では実際にどのようにするのかという現実的な問題がまだたくさんあるのです。テレビは、すでにオンライン上につながり始めていますが、では、冷蔵庫はどうするのか、電子レンジはどうかということもひとつです。そうすると、コンセプトを検証することが必要になってきます。仮に具体案や試作品ができてきたときに、本来あるべきネットワークの仕様や、使い勝手、技術的課題は何かという問題が出てくるわけです。一方、使い方次第では家庭内の情報が外から見えてしまうといったセキュリティの問題が新たに派生してくるなど、従来考えていなかった分野にまで踏み込んで技術的要素の必要性を見ていかなければなりません。当初は、ホームネットワークの実現に役に立つ技術開発に絞って見ていましたが、いまは、さらに幅を広げて、ワイヤレス、シームレス、さらにはIPテレビなど、ネットワークの通信技術からアプリケーションへと投資対象技術が広がり、また、移ってきています。
【森本】 実際に投資する基準はどこに設定されていますか。
【樺澤】 まず、我々の場合は、主幹投資家がするような詳細な精査はしていません。それは、主幹投資家との共同出資が基本になっているからです。通常、ベンチャーキャピタルの審査には、マネジメント、マネー、マーケットという3つのMがありますが、我々の場合は、「松下」のMを加えて4つのMと言っています。この「松下」の部分を見ることが我々の最も重要な業務です。松下電器と一緒に成功できる技術かどうかシナジーの有効性を評価することが我々の仕事になるわけです。もちろん、最初の3つのMを見ないわけではないですが、この部分はベンチャーキャピタリストが我々以上に厳しい目で見ている箇所になりますから、むしろ、松下電器と一緒に何ができるかの評価に力を注ぐことになります。 |