【森本】 製薬会社は積極的に出資することはないのですか。
【牛田】 1号ファンドでは、製薬会社が1社入っていますが、ただ、ほとんどの製薬会社は、投資でのキャピタルゲインを目的としていません。むしろ、そのようなことはご法度という考えが強くあります。また、ファンドに投資するとなると、投資先のチョイスやフォローはベンチャーキャピタルに任されることになりますが、製薬会社としては、気に入ったベンチャーがあれば自分たちで個別に出資や提携したほうが、有利にことを進められるという考えが強くあります。ですから、いい会社があったら情報だけくださいという会社が多いですね。我々としては、製薬会社は投資家というよりも、ベンチャーを買収なり提携してもらってEXITする対象として見る側面が強いですね。
【森本】 それは外国メーカーに対しても同じですか。
【牛田】 海外の製薬会社がファンドの出資者に入って、我々ゼネラルパートナーがそれほどハッピーでいられるかは疑問のところですね。かなり厳しく関与してくるでしょうからね。
【森本】 先ほどの新しいファンドの「味付け」のところですが、どんなことが考えられますか。
【牛田】 今考えているのは、切り口の工夫ですね。一口にバイオといっても、その範囲は非常に広いものです。我々は環境バイオとか食物バイオをやるつもりはありませんが、たとえば、バイオ医薬分野のなかでもテクノロジー系、デバイス系を対象にしたり、創薬一本の直球勝負でいったり、あるいは、ガンや感染症など疾患分野を絞るなど、切り口を特化する取り組みです。ついこの間も、感染症の薬だけに特化する事業で、ずいぶん資金を集めたバイオベンチャーがいました。コンセプトを明確にして打ち出すことが、一つの傾向になってくると思います。
【森本】 バイオベンチャーがIPOをできていない背景にはどういうものがあるのですか。
【牛田】 結局、IPOをすると、一般投資家がインターネットで株を買うわけです。2002-2003年ころは日本でもバイオブームが起きて、バイオの技術が過剰に評価されたということがあると思います。我々の評価では本来、時価総額が300億円程度と見られる会社でも、1,000億円にまで上昇するなど、毎日株価は上昇していました。そうすると証券会社が次にIPOする会社を実力よりも高い評価で公開させるようになっていきます。さらにベンチャーキャピタルもその流れに乗ってくることになって、バイオバブルの状況になりました。最後は、誰がジョーカーを引くかというところまで上昇して、それが弾けたということです。予想外に早い展開で進んでいきました。2004年夏以降のことですが、バブルが弾けた途端に、投資資金が急速に引き上げられて、現在まで続いているという状態です。
後編 「クロスボーダーな投資」(6月20日発行)へ続く。 |