【森本】 それだけの金額を調達するとなると、何十社ものベンチャーキャピタルに調達をかけなければなりませんね。
【牛田】 そうです。もう、日本ベンチャーキャピタル名鑑みたいな株主リストができます。入っていないベンチャーキャピタルを探したほうが早いくらいです。一応、リードを取る大手ベンチャーキャピタルが3億円〜5億円くらいを出資して、その他のベンチャーキャピタルがずらっと並んでいる状態ですね。少ないところでは1,000万円、1,500万円というレベルのベンチャーキャピタルもあります。
【森本】 そこではレクメド・ベンチャーキャピタルは技術レベルのリードをとる形になるのですか。
【牛田】 我々は心のリードと呼んでいますが。最初の立ち上げの一番苦しい段階で大きなシェアを取って、徐々にダイリューションしていきます。現在の我々の一番大きいポートフォリオでも4億円ですから。それも上場する段階になると、我々の持ち株比率は5%くらいになっているでしょうね。ただ、アーリーの段階での1億円は「死の谷」を越えるために非常に重要な資金になりますし、リスクも大きいものです。投資先の社長も、そのあとの段階での10億円よりも、立ち上げ当時の1億円のほうがはるかに嬉しかったと言っていただいています。そこが、我々の優位点でもあるのです。
【森本】 バイオベンチャーがそれだけ大きな資本を必要とする中にあって、一方で、冷え切った投資環境があるわけですね。海外の投資家の資金を呼び込むことは考えていらっしゃらないのですか。
【牛田】 日本のバイオ業界は非常にドメスティックにできていますね。海外の投資家に向けて情報を発信することは、まずありません。英語で海外投資家を意識したwebサイトを作っている会社もほとんどありません。さらに、これは日本の法制度とも関係するのですが、種類株がぜんぜん普及していないことも問題としてあります。米国の投資家の中には、日本の技術に興味を持つ人も結構いるはずだと思います。しかし、引き受ける株はコモンストックだというと、かならず驚かれます。 |