【森本】 どのような業界の投資でも、日本は米国の20分の1ですね。
【牛田】 バイオは80分の1ですからね。もう一つ驚いたことがあるのですが、米国のナスダックでは、バイオのIPOは、2001年から2003年の間に完全に止まって、公開企業がほぼゼロだったのです。それでも、米国のベンチャーキャピタルは毎年きっちり40億ドル〜50億ドルのバイオ投資をしています。しかし、日本のベンチャーキャピタルは、いま、IPOが止まっているからと投資をぐっと抑えているのですね。日本と米国では、まったく逆の動き方をしているわけです。
【森本】 高いときに買ったものが安いときに売れて、安いときに買ったものが高いとき売れないということになりますね。
【牛田】 まさにそれを象徴する話が、ダウンラウンドの際に日本では単純に前回より株価が下がっているからダメです、と言うベンチャーキャピタルが多いことです。
【森本】 リスクが低下しているのに、買わないわけですね。
【牛田】 でも、今は買い時ですよねと話すベンチャーキャピタリストも少人数ながら出てきていますので、少しずつですが、変わっていくとは思います。
【森本】 日本のバイオの環境は、今後どう動いていくと考えていますか。
【牛田】 客観的な環境は良くなってきているとは思っています。一つは、役所が変わり始めてきています。たとえば新薬の承認にしても、欧米で承認されて使われている薬が日本でまだ承認されていない薬はたくさんあって、これは、関係団体も相当クレームをつけていますから、厚生労働省も人的な審査体制の強化や審査プロセスの簡素化を進めています。これは、プラス要因だと思います。それから、定年退職やリストラを含めて製薬会社の人材が相当数流出してきています。この経験のある人材をうまく活用できれば、バイオ業界の活性化につなげられると思います。問題は、我々ベンチャーキャピタルによる資金の出し手のところだけです。このセクターがどうリスクを取れるのか、そして、逆張りする勇気を持てるのか、だと思います。だから、資金以外の環境は非常に良くなっていると考えています。
【森本】 バイオベンチャーの事業自体は好調なのですよね。
【牛田】 アナリストの人も言うのですが、やはり、成功例を一般投資家に見せることが何よりも肝心ということですね。うまくいくと、今年の終わりごろには、ちゃんとしたバイオベンチャーが何社かIPOするという話も出ていますから、そこで一般投資家が、またバイオに注目してマーケットに戻ってきてくれれば、株も割安ですから、来年以降、今度こそ本当のブームが来ると思います。
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