【森本】 ベンチャーキャピタルや投資家の方にファンドを説明する際には、どういうお話をされていますか。
【井出】 まずは、当社の投資スタイルである「ハンズイン」の説明から始めますが、より特徴を際立たせるために、他のベンチャーキャピタルとの機能面での違いもアピールします。というのも世の中にお金が余っている中で、ベンチャーキャピタル業界は、緩やかではありますが、実は機能分化が進んでいます。金融系を中心にして分散型投資のポートフォリオを作っていくところと、証券系のように将来のIPOに際しての引受会社への足がかりを狙っていくところや、我々のような領域特化型のファンドを運営するところなどです。そうした中で、たとえば金融系のベンチャーキャピタルの方とお話をする場合では、当社のファンドの特徴を説明した後、ハンズインの支援は当社で引き受けますから融資面でのご支援をお願いします、といった直截的な話をします。また、技術にあまり明るくないベンチャーキャピタルには、より投資検討しやすいように、こちらで保有している技術情報や、事業のリスクの話をしながら、共同投資の提案をします。それぞれのベンチャーキャピタルの特徴やコンセプトに応じて、補完的な関係が作れるようにお話をさせていただいております。
【芦田】 投資家の皆さんには、我々が厳密に精査することを説明します。そして、我々が売れると判断した案件は、ほぼ間違いなく成長していきます、ということをアピールしています。
【井出】 2号ファンドからの流れですが、我々の特化型ファンドで厳しいデューデリジェンスを行って投資するスタイルが認知されるにつれ、当社で投資したベンチャー企業に投資したいというベンチャーキャピタルも増えてきました。
【芦田】 前編でお話しました、50社におよぶ大手事業会社のトップを集めたネットワークを活用したデューデリジェンスに非常に高い信頼性があるわけです。あと、「ハンズイン」の育成スタイルも高い評価を受けています。
【森本】 近年の製造業の技術開発において、トレンドはあるのですか。
【井出】 製造業といっても、機械技術には限りません。製造業でもITを使用する技術開発も活発化していて、ここに注目しています。ただ、我々が投資するIT技術は、ウェブサービスの領域ではなくて、通信、検査機、センサーなどのハードウェア部門の技術開発が中心になっています。
【芦田】 いまは、家電でも自動車でもプリント基板に非常に多くのパーツが備わって一つの製品になっています。IC基板上にだいたい数百から数千にも及ぶパーツが付いているわけです。たとえば、自動車でそのうちの一つでもバグがあったら、それはもう欠陥品になります。ですから、今は全量検査の時代になっています。1,000種ものパーツが付いている基板を一つ一つ検査するのは膨大な時間と労力がいるので、やはりITの技術が必要になってきます。ITを使った検査機のニーズは非常に高くなっています。だから、IT技術のヘルプがないとなかなかものづくりもできない時代だといえると思います。 |