【森本】 投資家側からは他にはどのような質問がありましたか。
【郷治】 当然、リターンは出るのか、というのはあります。それから、投資は何件考えているのかとか、キャピタリストはどのように揃えるのかなどです。しかし、これらの点は他のベンチャーキャピタルのファンドレイズの際にも当然聞かれることです。
【森本】 東大はファンドに出資をしていないのですか。
【郷治】 していません。国立大学法人法という法律がありまして、国立大学は投資事業有限責任組合に出資することはできないことになっています。
【森本】 では、東大は東京大学エッジキャピタルの事業に対してどのような位置づけになっているのですか。
【郷治】 東大としては、我々にお金は出さないけれども、知財に関する情報提供の協力体制を作ってくれています。たとえば、研究者の同意があれば発明情報が私たちに開示される仕組みができています。また、学生への起業家育成のためのプログラムに我々も参加することで、有望な学生と交流することも可能です。東大は、知的財産や人材に関するインフラ面、情報面での協力体制を十分に整えてくれています。
【森本】 会社自体は、東大が所有しているのではないのですか。
【郷治】 そういうわけではありません。当社は、有限責任中間法人東京大学産学連携支援基金という基金が100%出資して設立された会社で、ファンドの資金についても、投資家が出資しているので、東大が所有しているわけではありません。
【森本】 なるほど。ところで、東大には大学ファンドはないのですか。大学財団のような形のものは。
【郷治】 東京大学基金というものはありますが、これは我々が運用するベンチャーファンドとは別のもので、基本的にOBなどからの寄付を募集する性格のものです。
【森本】 さて、次のファンドについてですが、1号目と同じ内容で組成する考えですか。
【郷治】 いま、1号のファンドからの投資先は24社あるのですが、我々がほぼゼロから事業を立ち上げるお手伝いをしたといえる企業は4分の1くらいあります。これをもっと増やしていかなければいけないと考えています。その理由は、すでにできあがっている会社に投資をするよりは、新しく事業を作っていくほうが、社会的使命からいっても意義がありますし、リターンも大きく取れるということがあります。我々がまだ十分に立ち上がっていないベンチャー企業に参画して相当のシェアを得た場合のほうが、当然、上場した場合のリターンが大きくなりますから、より早い段階から起業家の方々と一緒にビジネスを作っていくような投資を強化したいと考えているわけです。現在、当社全体の投資活動を徐々にそうした方向にシフトしていて、多分、2007年の後半から2008年にかけては、我々が新規に立ち上げるベンチャー企業の数は増えてくると思います。
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