起業家・ベンチャーキャピタル・投資家を繋ぐコミュニティ・マガジン

VC vision
前編 後編
第27回 ベンチャーの世界に革命を 前編 技術開発というハンズオン
株式会社ルネッサンス・エナジー・インベストメントは、
ファンドを組成してベンチャー投資を行う
ベンチャーキャピタルの投資手法とは一線を画した、
独特な投資スタイルを確立している。
そのユニークなベンチャー支援のあり方は、
とくに大学発ベンチャーの支援に強みを発揮している。
代表取締役社長の一本松正道氏に、
同社のベンチャー投資のスタイルとその狙いを聞いた。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
グループ主要メンバー主な投資先事例
プロジェクトごとに特別目的会社を作る

【森本】 まずは、ルネッサンス・エナジー・インベストメントの設立の経緯からお聞かせください。
【一本松】 私は、大学院を出て、25年間大阪ガスに勤めていました。キャリアのほとんどは研究開発の部門ですごしています。そして、ちょうど50歳になる前に、研究所長のポスト就任の話がありました。しかし、研究所長の仕事を見ていると、50%が管理業務で、40%が儀礼的な業務で占められるのですね。こういうことをこれからずっとやるのかと考えると、それは自分のやりたいことではないと思ったのです。そこで、自分の才覚で何か有意義なことをやりたいと考えて、大阪ガスを辞め、このルネッサンス・エナジー・インベストメントを始めました。2004年8月のことになります。
【森本】 社名にはどうして「エナジー」がついているのですか。
【一本松】 最初はエネルギー関係の分野でやりたいと思っていたのです。エネルギー分野にもいろいろ技術があるし、ユニークなアイデアもたくさんあります。しかし、原油価格がイラク戦争以降乱高下を繰り返し、これだけ価格が不安定だと、私の資本力ではとてもリスクが取れませんでした。したがって、エネルギー関係のプロジェクトはほとんどタッチできていないのですが、一度決めた社名は簡単に変えられないため、そのままになっています。
【森本】 「ルネッサンス」の意味づけは。
【一本松】 「ルネッサンス」は、変革を起こそうという意気込みでつけたものです。
【森本】 ルネッサンス・エナジー・インベストメントは、一般的なベンチャーキャピタルとは、ちょっと違う投資活動を展開していると思います。具体的にどのような活動をされているかお話し願えますか。
【一本松】 我々は、まずインキュベーターとしての展開から始めます。ですから、ベンチャー投資としては、最も上流のポジションにいるといっていいと思います。独創技術に特化して事業化を進めるビジネスです。分野としては、私自身が精通している新素材、新材料にフォーカスした新技術の掘り起こしを行っています。
【森本】 資金を集めてファンドを組成してから投資先を探すという従来のベンチャーキャピタルのスタイルではありませんね。
【一本松】 はい。インキュベーションのところは我々自身で投資をして、その技術がある程度形になって事業化できる段階になったところで、プロジェクトごとに投資家から資金を集めていくやり方をしています。取り組むプロジェクトは、すべて私がCEOになって、経営責任者として実行しています。ですから、それほどたくさんのプロジェクトを同時に立ち上げることはできませんが、一つ一つはかなり大きなプロジェクトといっていいと思います。対象は、大学での研究を基にしたものが主です。優れた材料技術や可能性のある技術を見つけてきて、それにビジネスプランを構想して、投資家が判断できる製品化の前段階くらいにまで事業化のプロジェクトを進めていきます。そこまできたら資金を集めて、起業させていきます。
【森本】 ファンドを組成するわけではないのですね。
【一本松】 はい。プロジェクトごとに特別目的会社を作って、投資家たちには、普通株の株主になっていただく形です。

新材料を利用したものづくりの分野

【森本】 技術を選択する場所は大学だけで企業からのルートはないのですか。
【一本松】 企業はないですね。企業の場合は、よほどのことがないかぎり技術を社外に出しませんから。
【森本】 大学の研究者からはどのようにして技術情報を得るのですか。
【一本松】 それは、個人的なおつきあいが多いですね。しかし、実際に特別目的会社を作るときには、大学を窓口にして契約関係を結びます。そこはきちんとしないと、我々の事業はできないです。ただ、もともとの出発点は個人と個人のつながりからになります。
【森本】 大学はどちらの大学と関係があるのですか。
【一本松】 京都大学と名城大学です。母校の東京大学、客員教授をしている東北大学、地元の大阪大学医学部、さらに名古屋市立大学医学部とも親密にしています。海外ではハーバート大学です。
【森本】 インキュベーションをやろうと考えた理由は何でしょう。
【一本松】 最初からインキュベーションだけをしていたわけではありません。創業から3年半の間で、いろいろやってみた中で、自分の何が優れているのかを客観的に見たとき、それは技術開発マネジメントだと考えました。大阪ガスでは技術開発をずっと見てきた経験がありました。ただ、大阪ガスでの技術開発は、どちらかというと、他社の技術を評価して買うということが多く行われています。したがって、他人が開発した技術の評価も多く経験してきています。また、海外の買収案件の事業性評価もしていましたから、金融的な経験、知識もあります。ですから、この技術に対する目利きと金融の知識を生かして、インキュベーションをしていこうという方向性にだんだん固まっていったということです。インキュベーションを始めたのは3年前のことです。
【森本】 大阪ガスを退社してからすぐにこの事業を始めたのですか。
【一本松】 そうですね。退社してすぐ始めました。
【森本】 大阪ガス時代の研究開発では、どのような分野を手がけていらしたのですか。
【一本松】 私は、大学時代には触媒とか固体表面物性が専門でした。大阪ガスに入ってから流体力学や酸化物半導体、内燃機関などでもそこそこ評価をされる仕事をしました。大阪ガスでは基礎分野の総責任者をしていましたし、営業技術の責任者もしていました。オリジナルな専門は物理化学になります。一般的な言い方ですと、固体物理から物理化学、それから、反応、一部バイオなどです。ITではなくて、材料をベースにしたものづくりの分野での技術開発が中心でした。
【森本】 一本松さんがおっしゃる材料にフォーカスした技術とは、ものづくりに関する技術になるわけですね。
【一本松】 はい。新材料を利用したものづくりの分野になります。




HC Asset Management Co.,Ltd