【森本】 まずは、日本ベンチャーキャピタル協会の設立の経緯からお話いただけますか。
【鴇田】 日本で民間のベンチャーキャピタルの事業がスタートしたのは1972年のことでした。それ以降、日本のベンチャーキャピタル業界は、着実に投資残高を増加させてきて、30年を経過した2002年には業界全体の投資残高が1兆円の大台に乗りました。1兆円という金額は、業界としての一つのステータスになる数字で、ベンチャーキャピタル業界も日本経済の一翼を担うポジションを占めるようになったことを示すものです。ちょうどこの2002年を前後した頃から、業界としての共通の問題や課題を解決する業界組織が必要だという意識がベンチャーキャピタル業界内に生まれてきていました。そうした声を背景にして、2002年に70社(名)のベンチャーキャピタルとベンチャーキャピタルの活動の進展に協力いただける企業・団体・個人が参加して誕生したのが、日本ベンチャーキャピタル協会です。
【森本】 協会設立にあたってまず目指したことはどのようなことですか。
【鴇田】 ベンチャーキャピタル企業を成長させることはもちろんですが、それ以上に、ベンチャー企業を育成することを重視しました。日本のベンチャーキャピタル業界が1兆円市場になったといっても、欧米諸国のベンチャーキャピタル市場は30兆円の規模にあるわけで、行政、法制度、会計制度をより有効なものへ改革して、業界のより一層の発展を期し、ベンチャー投資を飛躍させていこうという趣旨で活動しています。また同時に、優秀なベンチャーキャピタリストを育成することも重要な任務として取り組んでいます。全体として日本のベンチャーキャピタルのクオリティアップ、グレードアップを図って、有力なベンチャー企業の創出、育成に力を注いでいます。現在、当協会の会員数は100社強に上っています。
【森本】 日本ベンチャーキャピタル協会は業界の中でどのようなポジションに位置づけられているのですか。
【鴇田】 近年では、金融商品取引法などの新しい法規制や、会計制度の変更など、経済社会に新しい動きが各種出てきていますから、業界として一つにまとまって対応する必要性が高くなってきています。協会としての役割は、設立してから年を追うごとに増してきています。
【森本】 協会の体制についてお聞かせください。
【鴇田】 まず、法務に関する取り組みを行う法務委員会、会計制度について取り組む会計委員会、業界の統計データのデータベース化を進めている調査・研究委員会、他、税務委員会、広報委員会という形で、機能を分化させています。各種の課題をスムーズに取り組める体制へと整備も進めています。当協会も、ようやく業界内に定着して、そして、組織の拡大期へと移行する基盤ができてきたのが現在だと考えています。
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