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VC vision
前編 後編
第31回 グローバルなベンチャーの架け橋となる 前編 時代性を読んだ投資
グローブスパン・キャピタル・パートナーズは、
日本の最大手のベンチャーキャピタルであるジャフコの、
米国でのベンチャー投資部門をスピンアウトさせて独立したベンチャーキャピタルである。
代表取締役社長のアンディ・P・ゴールドファーブ氏に、
その独立までの経緯から
グローブスパン・キャピタル・パートナーズの投資戦略について話をうかがった

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
投資先事例

経験、人脈、ネットワークの蓄積

【森本】 アンディさんは、ジャフコ・アメリカから独立してグローブスパンを設立されたと伺っていますが、まず、その経緯からお話し願えますか。
【アンディ】 私がジャフコ・アメリカに入社したのは、1997年1月です。ジャフコ・アメリカがボストンに事務所を設立したときでした。それまでの東海岸の事務所はニューヨークにありましたが、そこを閉鎖して、ボストンに新しく事務所を開設するプロジェクトに参加したのがジャフコ・アメリカへ入るきっかけでした。
【森本】 日本にたいへん興味を持っていらっしゃるとお聞きしています。
【アンディ】 私の日本とのかかわりは、高校生のときまでさかのぼります。高校時代の夏休みに、京都に短期留学で日本に訪れています。それ以来、日本に大変興味を持つようになって、ハーバード大学では東アジア経済、特に日本経済について学びました。そして、大学卒業後に、日本に渡って、キッコーマンの開発企画部の仕事に4年間従事していました。その後、ふたたびハーバード大学のビジネススクールに入って、MBAの資格を取った後に、ダイレクトマーケティングの会社であるトランスナショナルに入ります。そこで、トランスナショナルのベンチャーキャピタル部門の設立に携わりました。
【森本】 それは、具体的にどのような事業だったのですか。
【アンディ】 トランスナショナルのダイレクトマーケティングの能力と技術関係の会社を合わせて魅力の大きいビジネスを展開しようというものでした。特にインターネット関係の技術については多くの企業が取り組んでいましたが、ダイレクトマーケティングのノウハウを持つ企業はありませんでした。そこを強みとするベンチャー投資を展開していきました。5年ほど、このトランスナショナルに勤めていました。
【森本】 その実績が認められてジャフコからの誘いがあったのですね。
【アンディ】 ええ。この期間は、キャピタリストとして活動をしていたので、ベンチャー投資に関する経験、人脈、ネットワークの蓄積がありましたから、その実績が評価されてジャフコ・アメリカに入ることになったということです。私は、ビジネススクール時代を含めて1991年から1997年の間は、日本との接点がなかったのですが、1997年に日本のベンチャーキャピタルであるジャフコからボストン事務所設立の話をいただいたときは、非常にラッキーなことだと思いました。それは、私はずっと日本に関係するビジネスをしたいと考えていたし、しかも、これまで携わってきたベンチャーキャピタルの経験が生かせる仕事でしたから、非常に大きなチャンスだと思ったのです。
【森本】 ジャフコ・アメリカがアンディさんに直接コンタクトを取ってきたきっかけは何だったのですか。
【アンディ】 当時ジャフコに勤めていたハーバード大学ビジネススクール時代の友人を通じて、ジャフコ・アメリカの社長であったバリー・シフマンが私に声をかけてくれたのです。バリーとは、グローブスパンの共同創業者として、いまも一緒に仕事をしています。

バランスの取れた投資を実践すること

【森本】 その後、現在のグローブスパンを設立して独自の展開をされていったのですね。
【アンディ】 ジャフコ・アメリカでは第1ファンドと第2ファンドを、100%日本の投資家による資金で、米国のベンチャー企業への投資を行っていました。そして、第3ファンドでは、私を中心に欧米の投資家からも資金を集めた運用を展開していました。グローブスパンは、2003年1月1日に、そのジャフコ・アメリカの第3ファンドをスピンアウトさせる形で100%移行させたものです。当時のボストン事務所はそのままで、また、独立した際に、カリフォルニア州のパロアルトと東京にも事務所を新たに開設しています。この独立は、ジャフコとは円満な関係で進められたもので、現在においても、ジャフコとはいい関係を続けています。
【森本】 独立したときに、グローブスパンの独自のファンドもスタートさせたのですか。
【アンディ】 グローブスパンのオリジナルなファンドは、2003年に、第4ファンドを立ち上げたのが最初です。2006年には第5ファンドも組成しています。
【森本】 グローブスパンのファンドは、それまでのファンドとコンセプトで何か違いはあるのですか。
【アンディ】 ファンドのコンセプトに、大きな違いはありません。東京事務所開設にあたって新しい人材を6人採用しましたが、基本的にチーム、スタッフもジャフコ・アメリカ時代のメンバーをそのまま引き継いでいます。ただ、独立後は、私のイメージ通りの投資活動ができていますから、独立の効果は大きいと考えています。
【森本】 資料を拝見するとファンドの投資額の規模は大きくなっていますね。
【アンディ】 それは組織やコンセプトが変わったことによるものではなくて、ベンチャーキャピタル市場の動向や我々の資金調達力の向上といった経済的側面からきているものだと思います。
【森本】 グローブスパンとしての投資戦略は、全体にどのような考え方をもっていらっしゃるのですか。
【アンディ】 グローブスパンの投資戦略は、通信、ソフトウェア、インターネット、それから太陽電池・バイオテクノロジー・エタノールなどのクリーンテック、そしてストレージ/半導体の5つの分野へバランスの取れた投資を実践することです。また、ステージでは、30%をアーリーステージに、60%をミドルステージに、そしてレイトステージへは10%の比率で投資するポートフォリオを原則にしています。我々が考えるアーリーステージとは、売上がまだ立っていない段階や、製品が完成していない段階の企業です。ミドルステージは、売上がまだ出ていませんが、経営体制が整っていて、製品もできていて、1年後までには製品の販売に移れる段階の企業と位置付けています。レイトステージは、製品は完成していて、売上が300万ドルから800万ドルぐらいの企業に定めています。しかし、ここでも、まだ赤字の企業がほとんどになります。




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