起業家・ベンチャーキャピタル・投資家を繋ぐコミュニティ・マガジン

VC vision
前編 後編
第3回 起業支援から経営支援まで 前編 ビジネスインフラの構築
MBAの取得が可能なビジネススクールや、
企業研修、出版、人材紹介などの事業を展開し、
日本における新たなビジネスインフラの構築に尽力しているグロービス・グループ。
1996年に設立されたグロービス・キャピタル・パートナーズは、
グループのノウハウを駆使してヒト・カネ・チエを投入した総合的な経営支援を実施する
ハンズオン型ベンチャーキャピタルとして事業展開している。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
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10年目のベンチャーキャピタル事業

【森本】 まず、母体であるグロービスの事業内容からお話いただけますか。
【仮屋薗】 グロービスは1992年に設立し、現在5つの事業を展開しております。年間1万人超が通うビジネススクール事業、大企業中心に250社以上にご提供している企業研修事業、ビジネス書のベストセラー「MBAシリーズ」の出版事業、「経営のプロ」のご紹介に特化した人材紹介事業、そして私の居るベンチャーキャピタル事業です。
【森本】 ベンチャーキャピタル事業を始められたのはいつですか。
【仮屋薗】 スタートは1996年です。その際に立ち上げた「グロービス・インキュベーション・ファンド」が5億4,000万円の1号ファンドです。そして、1999年には2号ファンド「エイパックス・グロービス・ジャパン・ファンド」を立ち上げました。このファンドは2006年3月で投資を完了しています。そして現在、新ファンドの運用をスタートさせようとしているところです。
【森本】 2号ファンドはエイパックスとの合弁ファンドでしたね。
【仮屋薗】 そうです。我々は日本市場に特化したベンチャーキャピタルファンドであるため、2号ファンド組成のためには、やはりエイパックスのドアノックがなければ資金調達が難しかったと思います。エイパックスへの投資家の方々は、世界の中でもトップクラスのプロの投資家の方々ですからね。エイパックスとの合弁ファンドを立ち上げたことで、投資家とのコミュニケーションや、投資委員会の組成方法など、欧米式のベンチャーキャピタルのさまざまなノウハウを得ることができました。
【森本】 投資家の方々は、どのような人たちでしょうか。
【仮屋薗】 1号ファンドの投資家は、ほとんどがエンジェルといわれる方々です。グロービスのネットワークを通じて知り合った上場企業の創業オーナーなど、相応の資産を持っておられ、新規ビジネスを支援してくださる方々に、約1億円単位でご出資いただきました。
【森本】 2号ファンドの200億円は、日本のベンチャーキャピタルのファンドとしてかなりの規模ですね。
【仮屋薗】 はい。たしかに2号ファンドは金額も非常に大きいものになりましたが、他の特徴としては、投資家の9割弱が海外の投資家である点です。海外の年金基金、大学の基金や企業のオーナーなどにご参加いただきました。もちろん日本企業の方々にも何社かご参加いただいています。
【森本】 ファンドの並行運用はなされていないですね。
【仮屋薗】 はい。並行ファンドは、どのファンドにどの投資を組み入れるかということが恣意的に行われる危険が生じますので、コンフリクトが発生し、機関投資家からは敬遠されます。弊社のベンチャーキャピタル事業は今年で10年になりますが、1号ファンドから順番に運用を行い、それぞれ投資を完了した上で、次ファンドへ移行しています。

IRR30%をターゲットに

【森本】 1号ファンドの運用実績はいかがですか。
【仮屋薗】 1号ファンドは13社に投資し、すでに10社がエグジットしています。おおむね結果は見えてきている段階です。投資家へのキャッシュ・オン・キャッシュのリターンが4倍から5倍で、投資に対するリターンでは7倍から8倍になります。残り3社は今年から来年にかけての勝負になると思いますが、最終的にはリターンは5倍を超えるのではと予測しています。
【森本】 1号ファンドは1996年に立ち上がっていますが、当時の景気の影響はありましたか。
【仮屋薗】 1996年、1997年は、組成タイミングとしては決して悪くない時期だと言われています。ファンド成果としては1997年、1998年のファンドが一番よいと言われ、2000年になるとかなりパフォーマンスが落ちました。これは米国でいえば2000年3月までのインターネットバブルにあたります。日本でも、2000年の5月くらいまでにネット関連企業の好調が終焉していますからね。それ以降が、歴史的にもベンチャーキャピタルの一番冬の時代と言われていて、3年間は、それこそファンドの組成自体が少なかったですね。パフォーマンスもリターンが100%未満のファンドばかりでした。しかし、そういった状況の中で、グロービスのファンド成績は悪くなかったですね。
【森本】 2号ファンドはいかがですか。
【仮屋薗】 1999年の2号ファンドは、現在ちょうど投資が完了したところですが、まだ、結果をお話しできる段階ではありません。50社弱に投資を完了し、現時点すでにエグジットしているのは15社程度です。結果が出た案件、出ていない案件ももちろんありますが、投資総額130億円程度に対し、リターンは、キャッシュですでに投資家にお返ししているのが100億円程度になります。残り3分の2以上が、これから成果が出るところですので、この数字がどこまで行くのか楽しみにしているところです。最低でもIRR20%は出したいと思っています。我々としてはIRR30%をターゲットにしており、そこまでいけたら大成功だと思います。
【森本】 パフォーマンスの最終的な結果が楽しみですね。
【仮屋薗】 はい。2号ファンドの成果を語るには時期的にまだまだ早いと思いますが、現状はそのような状態です。





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