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VC vision
前編 後編
第4回 愛と勇気とベンチャーと 前編 ファンドレイズが生命線
「バランス型」、「地域重視型」、「特化型」といった
ユニークなファンドを次々と開発するなど、
独立系ベンチャーキャピタルとして独自の道を歩む
フューチャーベンチャーキャピタル株式会社。
257億8,000万円のファンド総額にたよらずおごらず、
その眼差しは日本ベンチャーキャピタルの未来へと向かっている。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
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どうやって厚みのあるファンドをつくるか

【森本】なるほど、フューチャーベンチャーキャピタルには「特化型」というファンドもありますが。
【川分】これも、苦肉の策で生まれたものなんです。当初の狙いとしては、どうやって厚みのあるファンドをつくるかということでした。たとえば、我々が特化型ファンドと呼んでいるものに上場投信型ファンドがありますが、これは、私が日本アジア投資時代にいわゆる「会社型投資信託」を研究していたのが発想の元になっています。当時、大阪証券取引所やMOFと打ち合わせしたりしていたのですが、結局うまくいかなかったものです。独立したあと、これを何とかしたいという思いがあって、たまたま大阪府で同じようなシステムの導入を進めていたことを知りまして、我々がこれにアドバイスをしながら関わっていきました。
【森本】川分さんの仕事に対する粘り強い姿勢を物語るエピソードですね。
【川分】そして、大阪証券取引所で、この会社型投資信託の市場ができるのを機に、大阪府が30億円の予算を組むことになり、そこに参入しようとしたのです。ところが我々は投資顧問の一任勘定を持っていないので、スポンサーになれないという制約がありました。そこで、いろいろ相談して、住生グローバル投信(現・住友三井アセットマネジメント)が我々の提案に乗ってくださることになり、住生グローバル投信を中心に42億円の会社型投信のベンチャーファンドが立ち上がりました。そこからフューチャーベンチャーキャピタルに4億円の出資をいただく形で4億1,000万円のミニファンドを立ち上げたわけです。これがすぐに大阪証券取引所に上場されて、日本で初めての上場投信型のベンチャーファンドになったのです。私たちは黒子で表には出ませんでしたが、日本で初めてのファンドを立ち上げたという自負を持っています。
【森本】特化型には他にどのようなファンドがありますか。
【川分】地銀との「二人組合」があります。これは、全国の地銀とか自治体に「我々はこんなことをやっているので一緒にファンドをつくりませんか」という手紙を出して、話に乗ってきた地銀、たとえば、関東つくば銀行や愛媛銀行などとファンドをつくっていったものです。そのほかにも、関西の大学発のベンチャーや産学連携に特化したファンドなど、これらが「特化型ファンド」として展開しているものです。

ファンドレイズこそがVCの生命線

【森本】出資者から実際に投資をしていただくためのポイントはあるのでしょうか。
【川分】我々自身がベンチャー企業として、一生懸命やっているということが評価されているのだと思います。フューチャーベンチャーキャピタルとして重視していることは、投資したあとが大事だということです。最近ではハンズ・オンという言い方がありますけれども、ベンチャーの経営者との信頼関係をベースに、彼らが直面するいろいろな困難を一緒に解決していく姿勢にあるということです。私がよく、1カ月に1回社長に会うだけでリターンは倍にできるよと言うのですが、それくらい、ベンチャーの経営者との関係は大事なものなのです。当初の1号ファンドや2号ファンドは私をよく知っている人々が出資してくださったケースが多かったわけですが、こうしたフューチャーベンチャーキャピタルの特色が、だんだん投資家の方々から評価されるようになってきたということですね。
【森本】数多くのファンドを立ち上げ、投資家の方々からの出資金も順調に集まっているようにうかがえますが。
【川分】昨年の暮れに「FVCグロースファンド」というファンドで100億円を集めたのですが、これができた最大の要因は、我々自身も16億円の資金を投資しているということだと思います。「我々も1割は投資します。ですから、出資してください」という形で集めたのです。そうすると、一番多いところで15億円を出していただきました。もし、我々が1億円しか出さないと、やはり、最大限1億円しか投資していただけなかったと思います。我々自身ができるだけ多く出資できる自己資金調達力を高めてきていることが、ファンドの規模を大きくしてこられた重要なポイントだと思っています。ですから、自己資金調達力が高まれば高まるほど、ファンドの規模を大きくできて、資金も集めやすくなっていくと思います。
【森本】その自己資金はどこで調達するのですか。
【川分】それがまた苦労するわけです。まずは資本金ですが、これは限界があります。そこで借り入れですが、これがなかなかできないですね。銀行は貸してくれません。だから、結局、エクイティファイナンスで集めていくわけです。
【森本】フューチャーベンチャーキャピタルが上場したことも、そうした資金調達と関係がありますか。
【川分】そうです。というか、上場するしか選択肢がなかったというのが本当のところです。45歳で、自分に残された時間がいくらもないなかでの独立でしたから、速やかにベンチャーキャピタルを立ち上げていくことが必要でした。そうしたなか、どうしたら資金を集められるかというと、まず、上場していないと資金がなかなか集まらなかったのです。
【森本】上場はベンチャーキャピタルとして矛盾を抱え込むことになるので好ましくないといわれていますが。
【川分】私もそう思います。しかし、資金を集めるには、やむをえなかったのです。ですから、再度申しあげますが、ファンドレイズが、ベンチャーキャピタルが成功するか否かの最大のポイントになります。ベンチャーキャピタルの仕組みそのものは、基本的には儲かるビジネスモデルだと思います。ルールさえ守っていれば、元本割れはめったに起きません。ビジネスモデルとしては確立されたものです。
【森本】あとは、ベンチャーキャピタルを理解してくれる良質な投資家を確保できるかということですね。
【川分】はい。この投資家がもっと増えれば、日本のベンチャーキャピタルは大きく変わります。独立系のベンチャーキャピタルが生まれるためには、こうした投資家が必要です。我々は、ノウハウを全部公開してもかまわないと思っています。独立系がもっともっと増えてほしいと思っています。

後編 「ベンチャーを科学する」(6月21日更新)へ続く。





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