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VC vision
前編 後編
第6回 ベンチャーの奥深き森 後編 多様な投資、多彩な支援
プライベートエクイティの多用な投資手法は、
ベンチャーキャピタルに多彩な支援をもたらすことになる。
そして、メーカー出身者のキャピタリストを多く擁する
日興アントファクトリーは、理論的、抽象的なリーディングではなく、
各業界に通暁したリーディングを可能にする。
これこそが、真に企業を育てるものなのである。
interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
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社会人としての厳しさをもった人たち

【森本】 ベンチャーキャピタル事業はどのようなメンバーで活動されているのかお聞かせください。
【谷本】 人員としましては現在、11名います。ベンチャーキャピタルのみの経験者は私だけです。メーカー出身が6名、証券会社出身が2名、コンサルタント会社出身が1名です。あと、アナリストが1名です。
【森本】 メーカー出身の方が、すぐベンチャーキャピタルを担当されるのですか。
【谷本】 そうです。メーカーとはいっても、研究所や技術部門にいた人たちですから、技術評価ができる人たちなのです。
【森本】 なるほど。
【谷本】 先日は、大手自動車メーカーでエンジンを開発していた人を採用しました。その経験は生かされると思います。
【森本】 会計士やコンサルタントご出身の方が少ないですね。
【谷本】 それはプライベートエクイティ部門のほうに配属されています。弊社ベンチャーキャピタル部門の現在の採用では、ベンチャーキャピタリストとメーカー出身者を中心に行っています。
【森本】 ベンチャーキャピタルとプライベートエクイティとでは適性の違いがあるのですか。
【谷本】 ベンチャーキャピタルは目利き力が大事で、プライベートエクイティの場合は逆に実践力が重要になります。会計士だと経営支援的に経営改善ができるなどの投資後のハンズオンで役立てることが多いですからね。
【森本】 日本の場合、ベンチャーキャピタルは、新卒を採用して、若い人間を育てていくケースが多くなってきていますが、海外、とくに米国では、若い人がほとんどいなくて、シニアが多いですね。ベンチャーキャピタルの未経験者を育てるということには、どういうお考えをおもちになっていますか。
【谷本】 弊社のスタッフも決して若いほうではないですね。40代が5名いまして、あとは、30代半ばが4人と、20代後半が2人。30代前半の人がほしいですね。正直言って新卒を採用するのはちょっとしんどいですね。育てている余裕がありませんから、育った人に来てもらいたいと思います。
【森本】 育てる手だてや育つ環境はどのようになさっていますか。
【谷本】 まずは基本事項をしっかり学んでいただきたいと思っています。「前はこういうやり方だったのですが、今回はこれでいいのですか」といったギャップを感じてくれるぐらいがいいですね。この落差が仕事を理解するのに有効になってきますし、その経験を蓄積していってもらうことが大切ですね。あとみなさんドキュメンテーション作りに苦労していらっしゃいますが、弊社ではそれほど重要視していません。その分を他のところに力を入れてください、という考え方なのです。案件に関しては、その場その場で十分な議論ができればいいと思っていますから。だから、プレゼン内容が稚拙だと話にならないですね。また、ドキュメンテーションなど見なくても、担当者がどこまで調べているかは、2つ、3つ質問をしてみれば、すぐにわかります。そういう訓練は十分にできる人たちが集まっています。社会人としての厳しさをもった人たちだと思います。

VCとPE両方のネットワークが使える

【森本】 案件の発掘や審査はどのようになさっていますか。
【谷本】 全体が参加する投資委員会で案件を吟味し、投資決定を受けて担当チームが実行に移ります。ベンチャーキャピタル案件の発掘に関しては、日興コーディアルグループのネットワークがあります。あとは、各担当者のもっているネットワークです。とくにコーディアルのネットワークは、ボリュームが厚く、全国に拠点があります。一方、各人のネットワークは、鮮度の高い情報が入ってくる窓口になっています。この組み合わせが当社のベースになります。
【森本】 コーディアルのネットワークにはどういう特徴があるのですか。
【谷本】 公開間近の企業が多いですね。業種も分散しているというところも利点になります。個人のネットワークでは、一つはベンチャーキャピタリストの情報がありますし、メーカー出身者は、製造・技術分野のネットワークに強いということが有利に働きます。
【森本】 イノーヴァの立ち上がりの経緯についてお聞かせください。
【谷本】 出資者の方がこういうところに投資をしたいという希望をもってこられて、では一緒にやりましょう、というところから話が進んだものです。要するに、ベンチャーキャピタリストの人脈から生まれたということで、そこが大切なところなのです。こうした個人の独自の情報ソースがあるからオリジナルな投資が行えるわけです。他のベンチャーキャピタルが着手していない案件に投資ができるという点が、個々人のネットワークの重要さであるし、差別化の部分でもあるのです。
【森本】 委員会はどれくらいの頻度で開かれていますか。
【谷本】 週一回です。毎週金曜日の午前中いっぱいを使っています。最低3つくらいの案件について議論をします。また、案件の内容によっては、その案件だけの会議を別に設けることもあります。ベンチャーキャピタル部門の人間は11人だけですが、この投資委員会にはベンチャーキャピタル部門だけではなく誰が参加してもいいことになっています。プライベートエクイティ部門の人間がベンチャーキャピタルの案件をもってくることもありますし、その逆のケースもあります。この両方のネットワークを使えるのもメリットだと思います。とんでもない案件が出てくることもありますが、そこが大事なのです。私だったら先入観と固定観念で外してしまうだろうという案件でも、私の気づかない視点や捉え方があって、なるほど、と思うことも少なくありません。ベンチャーキャピタルの人間がプライベートエクイティについて意見を述べたり、逆にプライベートエクイティの人間がベンチャーキャピタルについて提案をする、そういうフリーなディスカッションが新しい案件やファンドを作り出していくわけです。




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