【森本】 堀場さんは1974年頃に投資家を集めて「京都ベンチャーキャピタル」というベンチャー投資を始められていますね。
【村口】 ええ。個人の資金を持ち寄って始めようとしたものでした。しかし、いつの間にか企業による投資になってしまい、そのため審査の段階で案件がみんな蹴られることになってしまって、どこにも投資できないまま立ち消えになったという苦い経験があったそうです。そのため、堀場さんは、ベンチャーキャピタルは個人の思い込みでやらなければあかん、という考えを強くもっておられたのです。
【森本】 村口さんがやられていることの先駆けのような話ですね。
【村口】 やはり、創業の苦労を知る人たちは、何が大事かということを直感的にわかっていて、どういう投資活動が必要なのか、そして、そうしないと日本からベンチャーが出てこないということを理解しているのですね。経営者として銀行と付き合うことに苦労していることもありますから。そうした人たちが出てきてくれたおかげで、3億3,000万円という少ない資金でしたが、1998年にNTVPi-1号投資事業有限責任組合をスタートさせることができました。翌年に2号、そのさらに翌年には3号、4号という形で、累計で60億円ぐらいのお金ができています。
【森本】 ファンドの特徴も、やはり、個人で運用するという点にあるのですね。
【村口】 そうです。個人で組成したベンチャーキャピタルファンドで、業務執行組合も私個人であることですね。私が意思決定の全責任をもつというものです。実際、運用の責任体が会社組織だと、デメリットもあります。たとえば、会社は買収されることもあるし、役員改選があり、従業員でしたら人事異動があります。資本だと譲渡ということもありえることです。つまり、長期的な責任体制を取るには不都合な面が出てくる可能性があるのです。ですから、私が一人でゼネラルパートナーを務めていることは、大きな特徴ですが、メリットも大きいと考えています。
【森本】 ファンドの運用状況はどうなっていますか。
【村口】 1号ファンドが1998年にスタートして、あと2年で丸10年を迎えます。昨年、DeNAという企業が上場しましたが、来年には、さらに3社くらいが上場できると思います。今は、1999年から2000年に投資した会社が、ようやく上場し始めてきた段階ですね。DeNA1社が上場しただけでファンドのもとを全部回収できたうえ、ファンドによっては3倍くらいの配当を出したものもあります。1号から4号のファンドはすべてサクセスファンドになっていくことは、ほぼ確定的といっていいでしょう。 |