【森本】 日本テクノロジーベンチャーパートナーズは、個人を責任体にしたファンド展開をされているわけですが、投資決定の判断はどのようにされているのですか。
【村口】 私がベンチャー経営者と打ち合わせを重ねて決めています。いわゆる組織型のベンチャーキャピタルですと、事業計画書など、審査書類を一通り出させて、財務予測を進捗管理していくというパラダイムになっていますが、私のファンドはスタートアップの投資ですから、財務予測はその時点では立てられません。ですから、どういう商品を生み出して、どういうビジネスにつなげていくか、そして、どうやって起業させるかという創業に向けたディスカッションを重ねなければ、話が始まらないのです。そういうプロセスを経て、これなら起業しても大丈夫という判断ができた企業に創業のための投資をしていきます。あくまでも、起業、創業のための投資というところが、ポイントです。
【森本】 そうした案件の選別審査に当たってはどういう視点を持って臨んでいるのですか。
【村口】 やはり、社長の人間性ということになりますね。一つに誠実であること。そして、根性があること、仕事熱心であること、勉強熱心であることなどです。そして、創業したあとにも20年くらいは働き続ける気力があることも大事です。ということなので、投資対象は35歳以前がいいと考えています。「ビジネス余命」という言葉をよく使うのですが、創業してから10年から20年はそのビジネス界で頑張れる時間をもっていないといけないと思いますから。
【森本】 40代、50代よりも、30代、それも前半であれば、それだけ可能性は大きくなりますからね。
【村口】 さらに、ネガティブリスクで言うと、仕事熱心でない人には投資しないですね。たとえば、定時を過ぎて電話を入れても誰も出ない会社ですね。これでは、一生懸命やっていると口で言われても信用できないですよ。1週間1週間で目に見えて劇的に変わっていくような会社がいいですね。そのためには、社長が仕事熱心、勉強熱心でやっていないと進化を遂げていけない。なにしろ、こっちは、2年3年早めに先行投資して、創業にできるだけ早く着手してもらうわけですから、週休2日なんていうサラリーマンのような感覚でいるようなところは論外です。
【森本】 最終的な投資判断は、どういう段階で、また、どういう根拠で行っているのですか。
【村口】 それはもう、何回も調べて、検討を加えます。創業するということは、未来の出来事ですから、シナリオは何通りでもたくさん書けるわけです。もし、こうなったらどうなるだろう、というシミュレーションを何度も何度も繰り返していくわけです。でも、そのシナリオがすべてを網羅しているかどうかはチェックしようがないのですね。これから起きることにマニュアルなんてものはないわけですから。だから、最後の最後は「感じ」というか、勘みたいな要素も入ってきます。
【森本】 まさに直感ですね。
【村口】 こういう直感が起きるのは、たとえば、朝早く目が覚めた時に、何かイヤーな感じがしたりするときがあるのです。そういう時は投資すべきではないということですね。つまり、もっとよく調べろ、ということだと思います。それが何なのかは自分でもよくわからないですけど、何かが足りないなあとか、何か違うなあ、という感覚ですね。しかし、投資が成功するかどうかは、一から十まですべて私の責任です。もし投資先が倒産した場合でも、これは残念ながら私の失敗でした、と胸を張っていえるかどうかなのですね。自分で行う投資判断に自信をもてるかどうかは、非常に重要なことなのです。 |