【森本】 ウエルインベストメントは、早稲田大学のベンチャー教育機関と密接な関連を持つベンチャーキャピタルですが、具体的にどのような関係性にあり、ウエルインベストメントはそれをどのように生かして事業を展開しているのでしょうか。
【東出】 1993年に、「早稲田大学アントレプレヌール研究会(WERU:ウエル)」というベンチャーの研究教育機関が設立されて、早稲田大学の起業家育成研究が本格的にスタートしました。これは、現在は早稲田大学のアジア太平洋研究センターに所属する組織です。このアジア太平洋研究センターと、1998年開設の早稲田大学ビジネススクール(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科)が力を結集し、ベンチャーの育成、輩出に向けた研究教育体制を強化しています。ウエルインベストメントは、このWERUをベースに、早稲田大学アジア太平洋研究センター、早稲田大学ビジネススクール、早稲田大学知的生産本部、理工学総合研究センター等と連携しながら事業を進めています。
【森本】 ウエルインベストメントは、どのようなビジョンのもとにスタートしたのでしょうか。
【東出】 ウエルインベストメントでは、「早稲田の杜から起業家を!」というキャッチコピーを掲げていますが、早稲田大学という名前と意味合いをコアに、社会に対してバリューを生み出していくことをビジョンとしています。早稲田の教授が中心になって大学の研究・教育活動を支援すると同時に、起業家の輩出、支援の展開を積極的に行うことを目指しています。
【森本】 早稲田大学のベンチャー研究をバックボーンにしたベンチャーキャピタルとなるわけですね。
【東出】 たしかにこれは特殊だと思います。率直に言うと、すべての投資が早稲田大学発というわけではないのですが、早稲田に何らかの形で関連する案件への投資が軸であることが基本です。たとえば、早稲田大学の先生の研究・テクノロジーを基にしたベンチャーへの投資。また、社長が早稲田の卒業生である企業への投資などですね。それから、早稲田大学に関連する何らかのネットワーク経由で話が入ってきた案件への投資も含まれます。こうした大学に関連するベンチャー投資が、私たちの投資構成のマジョリティを占めているのです。
【森本】 早稲田大学は卒業生も大勢いらっしゃるし、その卒業生が活躍されている分野もさまざまです。それらの個別の情報をどうやって引き上げているのでしょう。
【東出】 毎年1万人以上いる卒業生の全部をカバーすることは、現実にはほとんど不可能です。ただ、早稲田大学ビジネススクールの出身者のネットワークはできています。早稲田大学ビジネススクールは、開設されてから8年。その前身の早稲田大学システム科学研究所時代を含めれば、ビジネススクールの歴史は30年以上に及びます。現在のビジネススクールからの毎年150人ずつの卒業生と合わせ、すでに約2,000人の卒業生がいます。投資案件は、これらのネットワーク経由で入ってくることも多いですね。 |