【森本】 これまで6本のファンドが組まれていますが、その展開はどのような形で進んできたのですか。
【東出】 WIC1号からから4号までを1999年6月から2002年5月までの間にスタートして、2004年6月にウエル技術ベンチャーファンドが立ち上がって、今年2月に早稲田1号ファンドが設立されました。初期のファンドほど、エンジェル的な要素が強く、WICの場合は、2億5,000万円から4億円という規模で、それほど大きくはない金額を若干多めの件数に投資するファンドになっています。近年になって、ベンチャーを取り巻く情勢が変わってきて、小規模のお金も集まりやすくなってきていることもあるので、より投資規模が大きく、よりテクノロジーやイノベーションに向けた投資に焦点を絞るファンドが組めるようになってきました。ウエル技術ファンドは4億円の設定ですが、中小企業基盤整備機構のご協力も得て、早稲田1号は8億5000万円の規模で始めて、今現在は、20億円のファンドになっています。総額でいうと、40億円強の資金を運用している状況です。
【森本】 クローズしたファンドはあるのですか。
【東出】 まだ10年経っていませんので、すべて動いています。
【森本】 利回りはどうなっていますか?
【東出】 利回りは、結果が出ていないので、なんともいえないですね。しかしながら、今までに11社を上場してきていますし、今後半年から1年の間に、あと2社が上場する予定です。
【森本】 ファンドレイズにあたってのポリシーは、どのような姿勢でいらっしゃるのですか。
【東出】 まず第一には、私たちの理念に共感してもらうことですね。早稲田、イノベーション、テクノロジーをキーワードにした案件や、シード・アーリーでの展開に理解していただくことが重要です。個人、組織は問いませんが、どちらかというとエンジェルに近い形で、ベンチャーとして成功した方で、若い人・志のある人を助けてあげたいと考えている人たちが多いですね。
【森本】 出資者の人脈みたいなものもあるのですか。
【東出】 きちっと固まったネットワークがあって、その中で資金を集めるということはありません。しかし、フェイス・トゥー・フェイスがすべての基本で、ある意味、個人と個人のお付き合いの中で信用を積み上げてきた人たちにお願いをしてご協力いただいています。他の形のルートで募集してきたことはありません。
【森本】 そういう人たちは、どんな関係の人になるのですか。
【東出】 いや、これは案件の発掘にも関連しますが、血眼になって探し回っているわけではなくて、たとえば、うちの取締役会長の松田修一は、30年も早稲田大学でベンチャーの研究・教育をやっているわけで、そういう早稲田大学の教授たちが長い間につくってきたネットワークは、相当に太いものにできあがっています。そういうパイプを使いながら、ファンドレイズや案件を見つけ出すわけです。待っているわけでも、見つけにいくわけでもなく、上がってくるお話から共感できる方々、ビジネスの機会に投資をさせていただくというイメージですね。私たちと長期的に積み上げられてきた信用と共感がある人たちと組んでいきたいと思っています。
後編 「クリエイティビティというキャピタル」(10月18日発行)へ続く。 |