【森本】 案件の審査では、ポイントをどのようなところにおいているのでしょうか。
【東出】 案件の選別審査に関して、一番ウエイトを占めるのは人物です。とくに社長と経営陣の人物評価ですね。チェックリストがあるわけではないのですが、お話を聞いて、また、ビジネスを拝見させていただく中で、お互いに琴線に触れるような、感じ合えるものがあるかどうかは大きなポイントになります。
【森本】 経営者の人物評価では、やはり直感的なものが大きく働きますか。
【東出】 それはありますね。もちろん、単なる勘というより、私たちの経験に裏付けられた判断ということになりますが。大切なことは、ビジネスについて共有できる絵が描けるかということですね。たとえば、お金の話は一生懸命するけれども、ビジネスの話になると長続きしないという人がいます。語れる話がビジョンとか夢ではなくて、ファイナンスはこうしたいということだけにずれてくると、それはちょっと違うかなと思います。
【森本】 人物を見るポイントはどのような点ですか。
【東出】 ひとつのポイントとしては、聞く耳を持たない人には投資しないですね。これは、私たちの意見に従えということではなく、異なった見方、異なった意見に耳を傾けられるかどうかということです。これは、ビジネスのパフォーマンスを高めるのに必要な要素なのですね。
【森本】 といいますと。
【東出】 アカデミックな研究でもクリアになってきていることなのですが、ベンチャーキャピタルが投資したあとに、付加価値をつけながら、ビジネスを成功させるためには、3つのステップが必要です。ひとつは、的確なモニタリングをして進むべき道を外さないようにすることです。これは成功のための必要条件です。次に、足りないものを補ってあげることです。必要な人材を紹介することなどですね。より企業のバリューを高めるための手立てになります。そして、さらにバリューを上げようとするときには、従来とは異なった意見や見方を提供して、それらを踏まえて最終的なビジネスの戦略を決定してゴールに向かって走っていくことが求められるわけです。この3つめのステップが、パフォーマンスを10%上乗せできるかどうかのポイントになります。
【森本】 そのあたりのお話は、投資後の企業との関わり方、育成手法についても関わってきそうですが。
【東出】 そうですね。この3つのステップが、投資後の企業との接し方になりますね。それにもうひとつ加えるとしたら、人材がキーワードになると思います。私たちは、これまでの投資先のすべてについてリードを取ってきているわけではありません。しかし、リードをとらない企業に対しても相当にアドバイスは行っています。そこで何をやっているかというと、人材の紹介、結び付けです。ここには大きな比重を掛けていると思います。2つめのステップである「足りないものを補う」の部分ですね。
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