【森本】 各事業への支援策として、どういうコンセプトを掲げていらっしゃるのですか。
【塩谷】 コンセプトとしては、事業を基の部分から立ち上げていくこと、投資の比率はできるだけ大きく取っていくこと、そのなかでキーとなる人材や取締役になる経営人材を配置していくことでトータルな支援をしていくことを掲げています。しかし、そうはいってもマイノリティ投資も数多く行っています。マイノリティ投資の観点からいうと、当社には、その投資先のベンチャー企業の事業展開する業界に深く入り込んだグループ会社がありますので、その業界の投資案件ですとか情報などがいろいろ入ってくるわけです。そういうものを隈なく有効活用しようということになるとマイノリティ投資もやるようにはなります。
【森本】 マイノリティ投資は、どれくらいの比率で取り組んでいるのですか。
【塩谷】 2006年9月末現在、130社に投資して、そのうちの95件がマイノリティ投資です。しかし、投資残高は871億円あるうち、マイノリティ投資が占める残高は121億円です。やはり、子会社設立とその事業育成がITXの業務の大半を占めることになります。ただ、マイノリティ投資のなかから、ステップイン投資によって、グループ会社として育成する対象になることもあります。
【森本】 ITXは、投資と同時に事業育成にフォーカスしているということですが、ベンチャーキャピタルと異なる点、また、共通している点というのはどのようなところだとお考えですか。
【塩谷】 我々の投資先の多くが連結会社になっているので、それが決算上に表れてくるわけです。たとえば、ジャフコさんを例に取ると、会計上は連結していませんが、成功報酬を会計に反映させていきますので、そこが一番大きな違いですね。うちの場合は、投資し連結対象となる会社の収益自体を連結事業収益として認識します。投資育成先を売却した際のキャピタルゲインは売上・利益に計上する会計になっています。それからもう一つ、投資先(グループ会社)はいろいろな機能をもっていますので、A社の機能がB社の育成に役に立つといったシナジー効果が大きく反映される点も特徴的だと思います。これは、人材の面でもグループ会社相互で供給し合うことを行っています。こうしたグループ内で事業や人事面で相乗効果をもてる点は、ベンチャーキャピタルと違う点なのではないかと思います。
【森本】 そのグループ内でのシナジー効果は、意図的に形成してきたものなのですか。
【塩谷】 当初から業界を絞って事業投資をしてきましたので、自然に形成されてきたものですね。もちろん、今は、それを我々の強みとして意識的にやっています。ITXになった時点では、すでに、そのような戦略を取るようにしていましたから。 |