【森本】 日立のCVC室における広瀬さんの主業務はどのようなものなのでしょうか。
【広瀬】 2つあります。ひとつは、いかに日立の中に外のベンチャーの元気を取り入れていくか、ということです。もうひとつは、日立の事業に関連するベンチャー企業を育てていくということです。
【森本】 そのための具体的な策としては何をなさっているのですか。
【広瀬】 日立CVCは、米国のサンノゼ、ワシントン、ボストンにオフィスを持っていますが、日本のスタッフを約2年のローテーションで米国に赴任させています。そうすることで、毎日ベンチャーと会う経験を積んだ人間が非常に積極的な形で日本の職場に戻ってくるので、社内が活性化する効果があります。それと、日立の各事業部の人間をベンチャーのコミュニティに連れて行って刺激を与えたり、社内の各職場のイノベーションを促進するためのコースを設けて、そこでレクチャーをしたりしています。あと、社内ベンチャーの組織もあるのですが、そこでもプランの評価を手伝ったりして接点を広げています。やはり、実際に体験して、ベンチャーの世界はおもしろいと思う社員を増やさないといけませんから。
【森本】 ベンチャー企業の開拓はどういう手法で行っていらっしゃるのですか。
【広瀬】 最初は、ベンチャーキャピタルに出かけていって、ディールフローを紹介してもらっていました。それと、社内にはベンチャーと付き合っている事業部もたくさんありますから、社内に広報して案件を探すこともしてきました。また、コーポレートベンチャーもある程度存在を知られるようになると、自動的に案件が入ってくる状況になってきます。我々も、毎年投資枠をキープしてインキュベーションを行っているので、そのことがベンチャーキャピタルの世界でも知られていますので、いろいろなベンチャー企業がやってくることも多くなっています。
【森本】 日立は現在「インスパイアAプラン」を実践されていますね。
【広瀬】 はい、日立は何を大切に考えているかを内外に明示する展開をして、こういう事業に興味があります、こういう技術を求めています、という情報公開をしています。それを見てディール先が訪れてくるというルートもできてきています。
【森本】 コーポレートベンチャリング事業の陣容は、どういう経験の方々で構成されているのですか。
【広瀬】 日本に3名、カリフォルニアに4名、ワシントンに1名、ボストンに1名と、私を含めて合計10名です。ベンチャーキャピタルの経験者の方は外部から招聘しました、あと技術系や経理担当は日立社員が中心です。おもに企画畑を歩いてきた人が多いですね。我々は、技術の専門部隊として存在しているわけではなくて、日立には、研究所や事業部に多数の技術者がいるので、日立が何をやっているかを知っていることが重要なのです。 |