【森本】 投資先に実際にCVC室から人を送り込んだりしているのでしょうか。
【広瀬】 いまのところそれはほとんどありません。投資先と日立が協業するようないい関係をつくることは大切です。今までの投資先で人を派遣しているのは1社です。
【森本】 CVC室としては、投資先すべての会社にリードを展開しているのですか。
【広瀬】 独立系であまり経営が強くないところには、リードを行っているところもあります。しかし、5,000万円ずつ10社のベンチャーキャピタルが集まって投資していて必ずしもリードできる案件とは限らないものもあります。ケースバイケースということになります。
【森本】 今後の展開についてお聞かせいただけますか。
【広瀬】 今までの経験で最も重要だと思ったことは、ベンチャー活動の前と後が大事だということです。「前」というのは、ベンチャーを生み出すところで、多くは大学とか研究機関です。日立は日本の中で、大学連携を徹底的に進めるため、この2年間で大学と契約した組織的連携を構築して、すぐにスキームチームをつくれるようにしています。米国でも学会などでの交流で自分の技術の提携先を探すよりも、研究室の教授がすぐに自分でベンチャーを始めるようになっています。日立の米国法人でも、「ベンチャー・アンド・アカデミック・リレーションズ」という組織をつくって、アーリーステージの前の関係構築に役立てています。
【森本】 大学連携は、どれくらいの大学と契約しているのですか。
【広瀬】 14大学と組織的連携の契約をしています。そのうちのひとつは、中国の精華大学で海外の大学との連携もいっそう進めていく予定です。そして、「後」ですが、やはり、自分たち自身の売上げに結びつくことをやりたいということです。そのひとつはM&Aの展開ですね。ベンチャー企業のM&Aは非常に難しいことですが、M&Aもチャレンジ゙していきたいと思っています。それと、我々はジョイントベンチャーをつくる活動もしていきたいですね。いままではおもに、スタートしたベンチャーがIPOで終わるところまでをインキュベーションしていたわけです。しかし、その先の関連するベンチャー同士を提携させてより大きくしていくビジネスも取り組んでいきたいですね。もうひとつは、中国、アジアも日本以上に速くベンチャーの文化が社会化しているところがあって、こうした地域での展開を大きくしたいと考えています。今でも、2カ月に1度は米国に行っているのですが、昨年は、米国に行くのと同じくらい中国へも足を運んでいます。 |