【森本】 二つめのファンドにはどのような特徴があるのでしょうか。
【村松】 6年ぶりにふたたび投資する立場になったわけですが、Web2.0化という新しい環境変化の出現で、インターネット産業の様相が大きく変わっていることに気がつきました。Webが誕生して10年を経て、Web言語はHTMLからXMLへと10年スパンで移っていきつつあります。そういう変化の只中で、さまざまなベンチャーが誕生していて非常に活況を呈している状況です。そこで、もっと新しいコンセプトに特化したファンドが必要だと判断しました。「ブログビジネスファンド投資事業有限責任組合」がその二つ目のファンドです。これは、2005年頃から2006年にかけて「Web2.0」と総称されつつあった一連のイノベーションを「顧客創造のエンジン」に転換し、収益スケーラブルな事業構造と成長ポテンシャルを持つ会社を支援していく趣旨のファンドです。ブログ、SNSなどのソーシャルメディアや検索連動広告などの技術を中心とした、いわゆるWeb2.0という言葉で総称される技術やWebサービスの進化方向に着目して投資展開しています。2005年の12月に立ち上げています。
【森本】 もう少し詳しく特徴をうかがえますか。
【村松】 このファンドは、2、3億円の規模で1,000万円くらいずつ出資できればいい、という考えでスタートさせました。しかし2005年末の4カ月の間で高い反響をいただきまして、多くの出資希望者が集まってきてくださり最終的に10億円のファンドになっています。一つめのファンドとは逆に、投資先企業は7〜8割がミドルからアーリーで占められています。表面的なWeb2.0ブームは終わり、これから本当のイノベーションを通じて大きな収益をあげる企業が登場してきます、そこに出資してその変化をお手伝いしていこうという主旨のファンドです。今後はこうした企業との交流を深めていくことで、GMOインターネットグループのオープンなネットワークも拡大していくでしょう。
【森本】 Web2.0以降のインターネット分野はどのように変わって、また、市場的にはどれくらい拡大するものと考えになっていますか。
【村松】 先ほどもお話したように、Web言語がHTMLからXMLに大きくシフトしているわけですが、この流れは止まることなく進行していくものです。しかしながら重要なのは、そもそも「Web2.0企業」「Web2.0的な分野」などは存在したこともないし、これからも存在しない、ということです。ただし、「Web2.0的なイノベーションのトレンド」は、実態としての技術基盤の変化が確固たるものであるがゆえに、確実に進行しています。ブログはその中の一アプリケーションで、ほかにもSNSが出てきたり、YouTubeが出てきたりと、いろいろなWebサービス、ソーシャルメディアが出てきているわけです。これからはさらにこうした多様なアプリケーションがどんどん出てくるだろうと考えていまして、さらにこうした変化の上に乗ってビジネスモデルの形態も、従来の集中モデルから分散型へと展開されていくことも確実なことです。大手各社は集中モデルだけでは次の成長はないといわれて、分散モデルに舵を切り始めていますが、簡単にはいかないわけですね。いまはGoogleの一人勝ち状態ですが、これからは分散モデルに適応したところが次の覇者になるだろうといわれています。ですから、これからの市場規模については具体的には何ともいえませんが、IT業界はすべて、今後この流れに沿って動いていくということです。そこには大きなイノベーションの機会とビジネスチャンスがあるのです。
後編 「ケミカル・ネットワーク」(5月15日発行)へ続く。 |