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VC vision
前編 後編
第15回 ベンチャーケミストリー  後編 ケミカル・ネットワーク GMOベンチャーパートナーズ株式会社 取締役 村松竜
GMOVenturePartners株式会社がベンチャー投資の
テーマとして掲げるキーワードは、「Web2.0」、「仮想世界」。
ITビジネスの先端技術に注目し、
インターネット産業の次の10年を見据えたビジネスの発掘に力を注いでいる点が特徴だ。
しかもこれらの投資活動を担う専任スタッフはわずか2名だという。
徹底したコスト管理と仮想組織で運営する
GMOVenturePartners株式会社の投資システムを村松竜取締役にうかがった。
interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
パートナーズ GMOベンチャーパートナーズ 投資先実績一覧
ファンド運営にもマーケティング目線を

【森本】 GMOVenturePartnersでは、現在二つのファンドを運営しておられますが、投資家にはどのような方々が多いのですか。
【村松】 事業会社や大手のベンチャーキャピタルが中心です。
【森本】 ブログビジネスファンドを組成した際、投資家の方々から大きな反響があったということですが、どのような告知活動をされたのですか。
【村松】 そのファンドの特性から、まず、私たちのオフィシャルブログを通じて、私たちの考えを発信していきました。(「ブログビジネスファンド」http://blogfund.jugem.jpと「CNET VentureView」http://v.japan.cnet.com/blog) また、IT業界の中でさらにテーマを絞り込んだ分野に特化した ファンドは、非常にユニークなものでした。そのため、大手新聞やIT関連のメディアからかなり多くの取材をいただきました。IT系の雑誌や新聞では、2005年から2006年にかけてWeb2.0の世界への期待感が相当に大きくありましたので、Web2.0のファンドができたことを象徴的事象として取り上げていただいたことがあります。これらの記事を見た方々にアプローチしてきていただけるというサイクルが展開されたことも、このファンドに大きな反響があったことの要因だと思います。
【森本】 ブログやメディアの影響は大きいということですね。
【村松】 ええ、これまで、ファンドに関してPRやマーケティングを意識しているベンチャーキャピタルは少なかったと思います。しかしこの6年の間、事業会社の経営をしてきた経験からすると、逆にそのような情報発信をしていくことが非常に重要だと痛感しています。自らの事業内容の情報発信が成功するかしないかは、会社の生死を左右するくらい重大な問題です。ですからファンドの運営についても、マーケティング戦略を十分に考慮すべきだと思います。
【森本】 3つめのファンドについてのご予定はありますか。
【村松】 まだ具体的なプランはありません。現在の2つのファンドは8年満期のファンドになっていますが、組み入れはそれぞれ、まだ3割くらいの状況ですので。好況期にある今はバリュエーションも高いので、私たちとしては3、4年の間で組み入れていければいいという考え方でいます。好況時に投資した案件はパフォーマンスが出にくい傾向があるので、それほどアクティブに案件に取り組まないで、ファンドの残高をある程度確保しながら運営する方針でいます。

グループのメンバーが運営に携わる形態

【森本】 グループとしては投資事業による収益拡大には、それほど大きなウエイトを置いていないということですか。
【村松】 そうですね。当社はほぼ全員がバーチャルな集団になっていまして、正社員は2人だけしかいませんが、GMOインターネットグループのいろいろなメンバーが運営に仮想的に携わる形態になっています。たとえば、目利き役であればそういうことに長けている者が2,000人のグループスタッフの中にいますので、現場サイドでグループ内の提携という形で活動しています。ファンドの運用そのものもアウトソーシングでNVCC社(日本ベンチャーキャピタル)に依頼していますから、アライアンスやディールの部分を除けばほとんどが定型のプロセスで流れていて、ファンド運用の固定費をできるだけ低く抑える体制になっています。このように固定費が低いのでファンドの残高や管理報酬を気にしなくてもよい体制ですから、この2つのファンドで終わっても困りません。逆にいえば、新しいテーマが発見されさえすればすぐにでもそこにフォーカスしたファンドを組成することが可能だということです。2つのファンドのパフォーマンスが出た時点である程度の出資者を募ることができれば、3つめのファンドも創りやすくなるだろうと見ています。
【森本】 次に見えてきつつあるテーマとはどういうものですか。
【村松】 Web2.0をめぐるビジネスモデルは分散化しながら現在進行形で進んでいます。まだ数年はこうした状況が続くと思います。ですから、しばらくはこのテーマで実施していきたいと思っています。ただミクロな視点で見ていくと、おもしろい動きをキャッチすることができます。そうしたものをテーマ化してプロジェクト的に動くようにしています。その一つが、先日発表した「SecondLife Fundプロジェクト」です。まだファンドを組成しているわけではありませんが、ファンド展開も視野に入れてプロジェクト化しています。
【森本】 SecondLifeは、Webの世界で非常に注目されている オンラインゲームですね。
【村松】 はい。しかしSecondLifeそのものがおもしろいのではなく、インターネット世界全体が「仮想世界」化していくことがおもしろいのです。今後、いろいろな仮想世界ベースのビジネスが成立していくことが予想されます。プレイステーション3でもSecondLife的なものが取り入れられています。私たちとしても今後、明確にカバーしていかなければならないテーマだと捉えています。そのプロジェクトの第一弾として、3月にSecondLifeビジネス・デザインコンテストを開催しました。そこでは非常にたくさんのユニークなビジネスプランが持ち込まれまして、これからの可能性の大きさを確認したところです。こちらもメディアに注目いただき、毎週取材があります。


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