起業家・ベンチャーキャピタル・投資家を繋ぐコミュニティ・マガジン

VC vision
前編 後編
第15回 ベンチャーケミストリー  後編 ケミカル・ネットワーク GMOベンチャーパートナーズ株式会社 取締役 村松竜
GMOVenturePartners株式会社がベンチャー投資の
テーマとして掲げるキーワードは、「Web2.0」、「仮想世界」。
ITビジネスの先端技術に注目し、
インターネット産業の次の10年を見据えたビジネスの発掘に力を注いでいる点が特徴だ。
しかもこれらの投資活動を担う専任スタッフはわずか2名だという。
徹底したコスト管理と仮想組織で運営する
GMOVenturePartners株式会社の投資システムを村松竜取締役にうかがった。
interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
パートナーズ GMOベンチャーパートナーズ 投資先実績一覧
グループネットワークでお手伝いできるかどうか

【森本】 応募者は、どのような人たちが多かったのですか。
【村松】 私たちの業界に近い人たちが多かったですね。Webの技術開発者であったり、モバイル系の会社の技術責任者であったり、また、その方面の事業会社など、Webの最先端で活躍する人が予想以上に多かったことが特徴でしたね。私たちとしてはこの分野に注目すると同時に、この分野に注目している人たちとのネットワークを形成していくチャンスがあると考えています。同時に大手を含む事業会社からのアプローチもありました。情報を発信すればするほど、新しい情報が集まってくるという好循環になってきています。
【森本】 御社の陣容について、もう少し、詳しくご説明していただけますか。
【村松】 塩田というオリックスキャピタルとデトロイト・トーマツ・FASでベンチャー投資とM&A業務のキャリアをもつ者が投資担当のマネジャーを務めています。それとアクセンチュアとマイクロソフトでテクノロジーとマーケティングを専門としていた蔀(しとみ)という2名の正社員で構成されています。塩田が投資案件を担当して、蔀が投資後の事業支援を担当するという分担です。そして私が、投資からその後までの全般をお手伝いする形で、この3人が核となって運営しています。さらに東大生のインターンが2人、優秀な将来の起業家です。加えて、最先端の動向に敏感なpaperboy&co.の家入社長などのアドバイザリー3名と、ネット技術の専門家などがシンジケーションパートナーとして、全員経営者ですので、経営の視点をご提供いただき、お手伝いいただいています。ここが重要です。このメンバーは業界のインサイダー側のネットワーク情報に精通していますので、投資にあたっても業界についてのヒヤリングを一からやるような手法はとらず、もともと知っている業界を対象に、よく知っている人を通じた企業に投資していくというのが、一つのスタイルになっています。
【森本】 案件の発掘もそうしたルートが中心になるのですか。
【村松】 案件発掘には二つのルートがあります。一つは、いろいろなネットワークの紹介で入ってくる情報です。その中にはベンチャーキャピタルや証券会社からの紹介もかなりありますが、本当にコアとなる情報は、よい起業家や技術者が持っていますね。もう一つは、こちらから探しに行くものです。この案件の探査には、私たちなりの視点があります。イノベーション発生分野を6分野に分類して、それぞれに6段階のイノベーションベクトル評価を設定しています。そこから生まれた36のパターンに分類したマトリクスに各案件をプロットして、その中で大きな変化が起きそうな案件を抽出して進めていくというものです。このマトリクスを用いて人脈マップを作成することも可能で、一つの目安を作るには非常に効率的なシステムです。(マトリクス、投資先、分野解説など http://www.gmo-vp.com/focus/)
【森本】 案件の審査基準については、どういうプロセスで展開するのですか。
【村松】 基本的には、私たちが事業のパートナーになるかならないかという視点で見ます。やはりGMOインターネットグループがお手伝いできるかどうか、がポイントになっています。事業提携が先行する場合もあります。審査内容は他のベンチャーキャピタルとそれほど違いはないと思います。マーケット、業界内でのポジション、それから、経営陣の質というように多面的な視点から見ますし、より客観的な判断をするために、アドバイザリーの意見を取り入れます。

裏方としてお手伝いするという立場

【森本】 投資後の育成については、どういう方針をお持ちですか。
【村松】 私たちは育成というよりも、あくまでも裏方としてお手伝いするという立場でいます。もともとその企業が持っていらっしゃる潜在的なパワーや、経営者の才能を最大限に発揮させることが第一義だと思っています。たとえば、技術系で起業された方が、企業経営のノウハウを知っていれば簡単にできることが、知らないために苦労されているということがあります。そうした点をバックアップして、仕組みづくりや、各プロセスでの手法提案などのお手伝いを通じ、より企業の持つ能力を発揮できるアドバイスをする形です。文字通り後方支援というものが主になります。そのほかには、PRコンサルティングを行って事業内容の広告活動のお手伝いなどもしますし、GMOインターネットグループとの事業提携をプロデュースしたりして、投資先の事業展開を加速する活動を行っています。
【森本】 今後の展開として、どのような目標がありますか。
【村松】 インターネットの次の10年の展開が、一昨年前くらいから始まっています。今後7年くらいはIT業界においては、さらに大きな変化が続くと思います。次の10年が始まってから3年経った現在、Web2.0化を巡ってようやく本物がこれから登場してきます。例えばブログ関連ビジネスですが、今年からようやく本格的に利益を出す企業が出てきます。これから私たちのファンド展開も大きく進んでいくと思います。さらに次のテクノロジーについても注目していかなければなりません。「仮想世界」もそうですし、そのほかにも、モバイルの世界でもすでに利益を出し始めた新技術が出てきています。そうしたところにネットワークを張り巡らしていますが、今後はもっと緻密な展開が必要になってくると思っています。



インタビューを終えて

IT産業が誕生して約10年。多くのベンチャー企業が誕生し、また、技術的変遷と発展もめまぐるしい展開を見せている。そうした激しい変化の中でIT産業の発展を牽引し、さらに、その将来像の具体的なビジョンを提起しているのは、この10年の間に誕生してきたベンチャー企業たちである。IT技術を熟知するこれらITベンチャーが、従来からのベンチャーキャピタルに一歩先んじて、新たなIT技術への投資を展開する構図は、他産業には見られない姿である。今回取材したGMOベンチャーパートナーズ株式会社をはじめとして、新たにベンチャーキャピタル事業を起こすITベンチャーたちの姿は、これからのベンチャーキャピタルのあり方の一例を示す好サンプルといえるのではないだろうか。(森本紀行)

次号第16話(6月6日発行)は、株式会社レクメド・ベンチャーキャピタル 代表取締役の牛田雅之 さんが登場いたします。


HC Asset Management Co.,Ltd