【森本】 資料を拝見しますと、御社の場合、まず事業化すべき優れた技術があって、その事業化を目的にファンドという仕組みを使って資金を調達する、という流れでベンチャーキャピタルとしてスタートされています。
【土居】 テックゲートインベストメントは、製造業の研究開発から新事業を創造した企業経営者を含む事業会社経験者を中心に、カーブアウトの実践研究とコンサルティングからスタートしています。おっしゃるとおりでして、もともと、ベンチャーキャピタルをやろうとしていたわけではないのです。
【森本】 この事業を始められた経緯についてお聞かせください。
【土居】 はい。製造業を中心とする大手の事業会社では、さまざまな技術開発が行われています。日本では、優秀な技術者は、こうした大手事業会社の研究部門や国立の研究所に多く集まる傾向があります。しかし、その技術者たちの研究開発活動の中には、優れた研究・技術であるにもかかわらず、日の目を見ないで埋もれている技術も多くあります。こうした事業会社内で事業化されずにいる技術を、いかに有効活用していくか、そして、いかに新事業に結びつけるかをテーマに、テックゲートというコンサルティング会社を2002年に起こしたのが、私たちのそもそものスタートになります。テックゲートでは、大手事業会社の新規事業担当者、技術担当役員などと勉強会を企画し、日本文化にあったカーブアウトスキームに関する議論、研究を行ってきました。技術経営を発展させることを目的とする技術担当役員から構成される、社団法人「科学技術と経済の会」の中にカーブアウト研究会を設立いただきまして、同会の中でも日本の企業文化に適応したカーブアウト研究を推進してきました。カーブアウトスキームに対して、科学技術と経済の会の活動等を通じて、事業会社の経営陣の理解が得られるとともに、日本の産業界の活性化のためには、第三者としての技術評価や事業戦略立案に加え、第三者としてのファンド組成が必要との議論となりました。その結果として事業会社の後押しもあり、2004年にテクノロジーカーブアウトファンド設立準備会社としてテックゲートインベストメントを設立しました。
【森本】 通常のベンチャーキャピタルとは、目的や手順が異なっています。
【土居】 はい、まずは、事業会社との新事業創造の議論があり、事業会社の優秀な技術と人材がある、というところが我々のスタート地点です。この優秀な技術と人材をどのように事業化していくかに集約されるところが、我々の事業の特徴だと思います。ただ、新事業を作っていくために投資しているところは、我々もベンチャーキャピタルであるという言い方ができると思っています。
【森本】 カーブアウトのコンサルティングのためのテックゲートから出発し、カーブアウトを日本の産業の活性化というスコープで実践するために、ファンドの運用を行うテックゲートインベストメントが設立されたわけですね。
【土居】 はい、カーブアウトのスキームを研究するとともに、カーブアウトする前段階の経営戦略コンサルティング会社としてテックゲートを設立し、事業会社の経営陣の理解が得られるとともに、日本の産業界の活性化を推し進めるカーブアウトの実現には、第三者の資金も必要との金融会社の賛同も得られまして、2004年9月にテクノロジーカーブアウトファンドの設立準備と運営するためのテックゲートインベストメントを立ち上げています。このテックゲートインベストメントが、ベンチャーキャピタルとして機能する組織になります。
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