【森本】 テックゲートインベストメントのスタッフはどのような方々から構成されているのですか。
【土居】 ファンドマネージャとして4名、財務担当役員を含む管理部門3名、技術顧問、事業顧問、監査役に加え、大手事業会社のCTOなどを歴任された方々によるアドバイザリーボード6名で構成されています。
【森本】 案件の発掘に関してはどのようにされているのですか。
【土居】 案件の発掘のルートは、大きくは二つあります。カーブアウトを経営戦略として活用しようという事業会社から持ち込まれてくるルートが一つ。将来重要な技術を事業化したい、という場合がそれになります。話は、企業トップからもたらされることがほとんどです。また、技術担当役員レベルからの場合もあります。もう一つのルートは、技術者同士のネットワークです。これは学会や出身大学のつながりなどですが、こういう技術者のネットワークから個別に相談がくることがあります。カーブアウトは、スピンアウトして独立するよりも、親会社の支援があるのでリスクは少なく、成功する確率も高いですから、技術者の関心も高いと思います。ただ、技術者から持ち込まれた案件でも、親会社の意向を無視できませんので、事業会社に相談をして話を進めることになります。事業会社が最終的にノーといえば、その話を進めるのは難しくなります。
【森本】 ベンチャーとして立ち上げた事業の最終的なExitはどのような形で行うのですか。
【土居】 Exitの方法は3つあります。一つは、親元会社がその事業を買い戻すもの。二つめは、新規事業を立ち上げた経営者がIPOをしてExitするもの。そして、三つめはM&Aです。どれを目指すかは、それぞれの事業を進めながら考えるわけですが、親元会社として一番いいのは、事業が成功した時点で買い戻す方法になります。ただ、もともとは自分の会社の技術ですから、なぜそれを買い戻さなければならないのか、という考えはあります。しかし、カーブアウトベンチャーとして事業を始めた技術者にしても、会社を辞めて独立するなど、命をかけて取り組んで成功させたものですから、その点での交渉は重要な部分になります。
【森本】 M&Aで元の親会社ではない別の企業が買収する可能性はあるのですか。
【土居】 その可能性はありますが、これは、当然、親元会社との関係で了解がなければできません。現時点では、M&Aで他企業による買収の事例はまだありません。基本は親元会社、カーブアウト起業を行った技術者、投資家 3者にとって、有益なExit法が選択されるということです。
【森本】 投資してきた安件数はいくつぐらいあるのですか。
【土居】 今までの投資案件数は公表していません。事業会社より新聞発表された案件では、ソニーからの次世代ディスプレイFEDのカーブアウト"エフイーテクノロジーズ"がございます。
【森本】 カーブアウトや出資者の募集についての海外展開は考えていますか。
【土居】 海外の金融機関からの出資の可能性はありますが、我々の目的は、あくまで日本の資源の有効活用にありますから、現時点では、案件も資金も国内に限定していく方針でいます。
【森本】 今後の展望についてお聞かせください。
【土居】 2号ファンドは、1号ファンドでもう少し成果が出てからになります。1号ファンドが、今年中から来年にかけて投資が終わる予定ですので、その頃から検討していく予定です。まだ、大手事業会社も我々の取り組みの様子を見ているところだと思いますので、まずは、成功事例の実績をできるだけ早く作っていきたいと思っています。いずれにしても、カーブアウトという手法が、新事業創造における経営戦略上の選択肢として認知されることが大事なことです。また、金融機関にとっての新たな投資先や、投資家たちの新しい投資機会として認知されるようにしていきたいと思います。
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