【森本】 まず、エス・アイ・ピーの設立当時の理念について、お話をうかがいしたいと思います。
【齋藤】 当社の設立は1996年で、今年で11年目になります。そもそもの経緯をお話しますと、現取締役会長で私の父でもある齋藤篤と初代社長の伊藤親保は、1991年にCSKベンチャーキャピタルを立ち上げています。その後の紆余曲折を経て、ふたたび二人が1996年に新しく立ち上げたベンチャーキャピタルがエス・アイ・ピーです。
【森本】 齋藤篤氏は、ジャフコ、日本アジア投資で企業型ベンチャーキャピタルに10数年間携わってこられていますね。
【齋藤】 はい。銀行に対するカウンターパートである直接金融会社としてのベンチャーキャピタルを国内で一から作り上げてきたパイオニアの一人です。その齋藤篤には、日本のベンチャーキャピタルが、米国のベンチャーキャピタルに比べて低いパフォーマンスにとどまる問題を克服したいという思いがありました。米国のベンチャーキャピタルをしのぐパフォーマンスを実現するベンチャーキャピタルを作り上げるのが、長年の目標でもあったのです。ですから、エス・アイ・ピーでは、米国と競争できるリターンが得られるファンド展開を実現することが大きなテーマになっています。また、齋藤篤と伊藤親保がエス・アイ・ピーを設立する際に掲げたキーワードは、ハンズオンでした。
【森本】 米国型のベンチャーキャピタルのスタイルを導入しようという思いが込められたキーワードですね。
【齋藤】 米国のベンチャーキャピタルは、ベンチャーキャピタリストがアントレプレナーとともに汗を流して、その会社と命運を共にして活動することが基本スタイルです。対して日本の企業型ベンチャーキャピタルには、担当制が敷かれ、組織としてのサポート体制は整備されていますが、人間と人間の付き合いを通じた共同作業を行う場面はほとんど見られません。米国のベンチャーキャピタルのように、ベンチャーキャピタリスト個人にアントレプレナーシップの力量が備わったベンチャーキャピタルを作りたい、ということで始めたのがエス・アイ・ピーでした。
【藤原】 第1号ファンドとして「SIPグローバル1」を立ち上げています。これは、齋藤篤と伊藤親保の二人が中心となり、日本と米国のベンチャー企業に投資するファンドで、齋藤篤が日本を担当し、伊藤親保が海外を担当しました。ファンドの設立は1997年です。米国のベンチャーファンドと同じようなパフォーマンスを上げる目的で組成したものですが、当時はまだ投資事業有限責任組合法ができる前でしたので、ケイマン籍で設立したファンドとして資金集めをしました。しかし、ちょうど金融危機の頃でして、結局、200万ドル規模のファンドレイズになっています。14社に投資をして、最終的に株式公開した企業は6社でした。2倍弱くらいのリターン率で、2006年12月に償還しています。 |