【森本】 現会長のご子息である齋藤茂樹さんが2007年6月にCEOに就任されて、新しい体制が始まったわけですが、エス・アイ・ピーは今後どのように変わっていくのでしょうか。
【齋藤】 これまでの11年の歴史を踏まえて、新しい体制での取り組みを始めています。その牽引者になるのが、今、ここにいる私と藤原と白川の3人です。この3人が集まることで、日本のベンチャーキャピタル業界に、新しいエポックを与えることができると思っています。米国のクライナー&パーキンスやセコイアキャピタルのような、個人の力量に立脚してハンズオンできるベンチャーキャピタルを求めていきます。
【森本】 3人は、どのような経緯でエス・アイ・ピーに関わるようになったのでしょう。
【齋藤】 私は、NTT出身です。インターネットが発展するにあたり、通信ビジネスからアントレプレナーシップがドライブする業界に移りたいと考えて1994年にNTTを退社しています。その後は、米国に渡り、ネットスケープ・コミュニケーションズに入社し、米国のベンチャーを見てくる機会を持ってきました。
【森本】 エス・アイ・ピーを立ち上げた頃は、まだ米国にいらしたそうですね。
【齋藤】 はい。立ち上げに際しては、米国のベンチャーの調査のために、会長と一緒に米国のベンチャーキャピタルを見て回ったりしました。私が米国で受けたベンチャーキャピタリストの印象は、「ビジネスのプロ」というものなのです。実際に、新規企業の創業者に話をうかがったとき、ベンチャーキャピタルを極めるには、ベンチャービジネスを極めた経験でベンチャーキャピタリストになる道と、博士号を取得する等専門分野の知識を深く持ちながらファイナンスのアナリストから入っていく道と二通りあるという話がありました。そこで、インターネットのベンチャービジネスのキャリアを蓄積するために
米国でベンチャービジネスの道を10年ほど歩いてきました。この経験を持って、ベンチャーキャピタルの道に移ってきたわけです。会長の求めていた生き様を公私ともに近くで見てきましたし、エス・アイ・ピーの最初の事業計画作りから関わりながらやってきたこともあったので、エス・アイ・ピーの新体制の話が出てきた際に、参加することに決めました。
【藤原】 私は、2001年にエス・アイ・ピーに参加して、2005年より、当社の社長を務めています。それまでは、日本アジア投資で審査部長などを務めながら、13年間にわたってベンチャーキャピタルの最初から最後までの業務を経験してきました。その過程で持った問題意識は、投資家に対する責任をどうしたら最も迫力ある形で果たせるのかということです。そういう観点で見ると、独立系のベンチャーキャピタルは、一つの答えになっているという認識があります。ファンドレイズに最初から最後まで関わり、投資育成のプロセスを同一人物でずっと続けられる点はメリットです。投資家に対して首尾一貫した責務を果たす体制が実現できます。エス・アイ・ピーに参加したのも、そうした問題意識を具現化できると考えたからです。
|