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VC vision
前編 後編
第19回 わが魂をベンチャーに埋めよ  前編 ハンズオン型独立ベンチャーキャピタル
ジャフコ、日本アジア投資で
日本のベンチャーキャピタルの草創期を 作りあげてきた
齋藤篤氏が設立したベンチャーキャピタルがエス・アイ・ピー株式会社。
ベンチャーキャピタリストの力量に立脚する
独立系ベンチャーキャピタルの実現がコンセプトに掲げられる。。
今年6月、新しい指導体制を確立したエス・アイ・ピー株式会社は、
これからはどう変わろうとしているのか。
これまで取り組みを振り返りながら、今後目指す展開を
代表取締役CEOの齋藤茂樹氏、代表取締役社長の藤原和隆氏、
取締役の白川彰朗氏のお三方に話をうかがった。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
パートナー 投資先事例
新しい可能性を持ったファンドを育てる

【森本】 その手法でエス・アイ・ピーとしての収益は出るのですか。
【藤原】 それ自体の収益性は高いとはいえませんが、1本めのファンドで実績を作れれば、2号、3号とつながっていきますし、ベンチャーファンド以外のファンドにも手を広げることが可能です。
【森本】 なるほど、信託会社としても事業を広げられますね。
【白川】 受託対象を広げていけば、コンテンツ系やフランチャイズオーナー向けなど、対象業界をいくらでも拡大できますから、一つのビジネスとなりえると思います。
【森本】 このファンドの出資者は、どのような方々ですか。
【藤原】 民間の出資者としては上場会社が主です。あと、一部個人も入っておられます。
【森本】 外国人投資家はいないのですか。
【藤原】 おりません。会長の業績を昔から知る企業経営者や金融機関といったところが中心になっています。
【森本】 そのほかにも展開しているファンドはありますか。
【齋藤】 現在続行中なのが、「SIP知的創造投資事業有限責任組合」というファンドです。
【藤原】 会長は、いま、金沢工業大学の大学院で客員教授をしていますが、この大学院にはおもしろいベンチャー研究を行っている知的創造の専攻科があります。ここから、立ち上がってくるベンチャーをひとつのターゲットにしてスタートしたものです。金沢工業大学大学院は、外部で実業を持つ人を50名くらい客員教授として招いて、社会人に対する実践的な講義が行われています。このファンドの設立は2004年で、5億円で組成しています。基本的には、知的財産権、経営上のイノベーションがあって、他社にまねできないような技術やノウハウのあるベンチャー企業に投資していくファンドです。このファンドも、出資者は上場事業会社やベンチャーキャピタル、証券会社等です。また、このファンドでも中小企業基盤整備機構から出資いただいています。
【齋藤】 そして、いま立ち上げているのが、「デジタルコンバージジェンスファンド」です。ここまでの流れが、一応、11年間のエス・アイ・ピーの活動内容になります。
【藤原】 いままでで、総額で20億円のファンド運営ですから、それほど大きい規模ではありませんが、新しい可能性を持ったファンドを意欲的に育ててきていると自負しています。

キャピタリストのハンズオン能力を極めていく

【森本】 エス・アイ・ピーの設立当初、周囲のベンチャーキャピタルとの違いをどのように意識されていたのですか。
【藤原】 ベンチャーキャピタルの数はそこそこ増えてきていましたが、個人で企業育成を実施してきたトラックレコードを持って独立するベンチャーキャピタリストは、まだまだ少数でした。ですから、設立当初から、実力あるベンチャーキャピタリストの独立に理解を示す人を中心にして成り立っていたことが当社の特徴なのです。
【森本】 ベンチャーキャピタリストクラブを作ったときに、名称に「キャピタリスト」を掲げたのは、その考えを表していたわけですね。
【藤原】 そうです。
【森本】 ベンチャーキャピタリストクラブを作ったきっかけは、どういうところにあったのですか。
【齋藤】 ベンチャーキャピタリストの勢力となる組織を作りたいというビジョンが先にあって、徐々に人が集まってできたというのが実情です。その集団の中から独立系のベンチャーキャピタルを立ち上げる人が少しずつ出てきたのが、その後の流れになっていると思います。
【森本】 クラブはどういう活動をしているのですか。
【齋藤】 現在は、具体的な活動を行っていませんが、 それをもう一度、再組織化する必要があると思っているところです。ちょうどタイミングとして金融商品取引法ができて、企業型とは別のハンズオン型のベンチャーキャピタルをもっと増やさないといけない状況が生まれています。これからは、ハンズオン型独立ベンチャーキャピタルに投資する投資家をいかに集められるかがポイントになります。
【藤原】 ですから、独立系のベンチャーキャピタリストの勢力を大きくして活性化させることを考えたとき、こういうクラブのような活動に、もう一度火をつけていくことは大事なことだと考えています。
【森本】 今でも、エス・アイ・ピーは、ベンチャーキャピタリストを表す「個人」がキーワードなのですか。
【齋藤】 我々は、ベンチャーキャピタリストの個人に立脚した能力とは、ハンズオン能力だと思っています。そのベンチャーキャピタリスト個人が持つハンズオン能力を、いかに極めていくかということをキーワードにしていることが、当社の原点であり、それは、これからも変わることはありません。


後編 「公開後を視野に入れるベンチャーキャピタル」(9月19日発行)へ続く。


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