【森本】 萩原さんがベンチャーキャピタルを設立された経緯からお聞かせ願えますか。
【萩原】 大学を卒業して最初に入社した会社が、「フォー・ユー」というベンチャー系の企業で、古本ショップを全国で店舗展開していた企業です。私はそこで、経営企画を担当して、リサイクルショップ、古着屋、飲食事業など、事業の多角化に取り組んでいました。そして、入社2年後に、「はなまる」という讃岐うどん店のチェーン展開をする会社に移ります。なぜ移ったかといいますと、「はなまる」はもともと「フォー・ユー」と資本提携していたグループ会社でした。「フォー・ユー」が讃岐うどん店のノウハウが分かってきた段階で、「はなまる」との提携を打ち切って、独自に讃岐うどん店のチェーン展開をするプランを打ち出したためです。私としては、それはあまりフェアなやり方ではないという思いがあって、社長にもそう主張をしたのですが、結局、「フォー・ユー」は讃岐うどんチェーンを始めました。私は、むしろ「はなまる」で事業拡大の仕事に取り組んだほうが魅力的ではないかと考えたわけです。
【森本】 それからまた2年後に、「リプライオリティ」という広告関係の会社に移られていますね。
【萩原】 はい。それまで、私は、経営企画のポジションにいましたので、経営企画の仕事なら、業種を問わなくてもまっとうできる自信がありました。転職に躊躇することはありませんでした。むしろ、それまでの飲食業とはまったく異なる事業を展開する企業であったことが、自分のキャリアを積むには、いい選択だったと思っています。
【森本】 「リプライオリティ」の魅力は何だったのですか。
【萩原】 実は、「はなまる」にいたとき、PR、広告宣伝にも多少関わっていまして、それも縁だったのですが、それよりも、「リプライオリティ」の事業を知ったとき、新鮮な驚きがあったのですね。それは、店舗の空いているスペースを使ったプロモーションというものですが、店舗の空きスペースを広告媒体として活用して、そこに情報誌を置いたりする商品情報の宣伝を行うビジネスなのです。要するに、スペースを提供する店舗にとっても、店舗スペースという媒体に冊子などを置いて広告活動を行う側にとっても収益に結びつけることが可能なビジネスです。これは活用の仕方によっては相当な事業価値が生み出せるのではないかと思いました。
【森本】 そういう経歴をもって独立されようとしたとき、どういうビジネスを始めようと考えられたのですか。
【萩原】 二つありまして、一つは、雑誌流通の変革のプラン。そして、もう一つはインターネットを使ったプロモーションです。国内の雑誌を含めた書籍の流通は、古くから固定された世界になっています。出版社と書店の間に取次店が入って流通形態を形成していますが、これを変えることができるのならビジネスチャンスが大きいと思いました。
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