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VC vision
前編 後編
第22回 ベンチャーキャピタルというベンチャービジネス 前編 経営企画とハンズオンと
グロースパートナーズ株式会社は、
2005年12月に創業した新しいベンチャーキャピタルである。
創業者の萩原義行氏は、若干30歳。
しかも、これまでベンチャーキャピタルはもちろん、
金融機関での実務経験をまったく持たない異色のベンチャーキャピタリストである。
こうした従来にない人材による参入は、日本のベンチャーキャピタル業界が、
新しい時代に入ったことを示す、一つのトピックスといえるだろう。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
パートナーズ投資先事例
異なる事業経験で自分のキャリアを積む

【森本】 萩原さんがベンチャーキャピタルを設立された経緯からお聞かせ願えますか。
【萩原】 大学を卒業して最初に入社した会社が、「フォー・ユー」というベンチャー系の企業で、古本ショップを全国で店舗展開していた企業です。私はそこで、経営企画を担当して、リサイクルショップ、古着屋、飲食事業など、事業の多角化に取り組んでいました。そして、入社2年後に、「はなまる」という讃岐うどん店のチェーン展開をする会社に移ります。なぜ移ったかといいますと、「はなまる」はもともと「フォー・ユー」と資本提携していたグループ会社でした。「フォー・ユー」が讃岐うどん店のノウハウが分かってきた段階で、「はなまる」との提携を打ち切って、独自に讃岐うどん店のチェーン展開をするプランを打ち出したためです。私としては、それはあまりフェアなやり方ではないという思いがあって、社長にもそう主張をしたのですが、結局、「フォー・ユー」は讃岐うどんチェーンを始めました。私は、むしろ「はなまる」で事業拡大の仕事に取り組んだほうが魅力的ではないかと考えたわけです。
【森本】 それからまた2年後に、「リプライオリティ」という広告関係の会社に移られていますね。
【萩原】 はい。それまで、私は、経営企画のポジションにいましたので、経営企画の仕事なら、業種を問わなくてもまっとうできる自信がありました。転職に躊躇することはありませんでした。むしろ、それまでの飲食業とはまったく異なる事業を展開する企業であったことが、自分のキャリアを積むには、いい選択だったと思っています。
【森本】 「リプライオリティ」の魅力は何だったのですか。
【萩原】 実は、「はなまる」にいたとき、PR、広告宣伝にも多少関わっていまして、それも縁だったのですが、それよりも、「リプライオリティ」の事業を知ったとき、新鮮な驚きがあったのですね。それは、店舗の空いているスペースを使ったプロモーションというものですが、店舗の空きスペースを広告媒体として活用して、そこに情報誌を置いたりする商品情報の宣伝を行うビジネスなのです。要するに、スペースを提供する店舗にとっても、店舗スペースという媒体に冊子などを置いて広告活動を行う側にとっても収益に結びつけることが可能なビジネスです。これは活用の仕方によっては相当な事業価値が生み出せるのではないかと思いました。
【森本】 そういう経歴をもって独立されようとしたとき、どういうビジネスを始めようと考えられたのですか。
【萩原】 二つありまして、一つは、雑誌流通の変革のプラン。そして、もう一つはインターネットを使ったプロモーションです。国内の雑誌を含めた書籍の流通は、古くから固定された世界になっています。出版社と書店の間に取次店が入って流通形態を形成していますが、これを変えることができるのならビジネスチャンスが大きいと思いました。

開かれた関係性をもてる投資ファンドを目指す

【森本】 そこまで、具体的に独立する際のビジネスプランを考えておられたのに、なぜ、ベンチャーキャピタルの設立へと、方向が変わったのですか。
【萩原】 まず、起業する前に、それまでにお世話になった方々に事業会社をつくろうと思っているという挨拶をして回ったのです。そのとき、ある方からベンチャーキャピタルをやったらどうかという話をいただいたのです。それまでベンチャーキャピタルの経験はまったくなかったのですが、私のような経歴の者がベンチャーキャピタルに参入することは、国内ではあまり例のないことですし、そういう意味では、違った特色を出した価値を発揮できるのではないかと思いました。そこで、2週間くらいいろいろと考えたのちに、ハンズオンを中心としたベンチャー企業への投資ファンドの立ち上げを決断したというのが独立までの流れです。
【森本】 アドバイスをされたのはどのような方なのですか。
【萩原】 ベンチャー起業を立ち上げて成功された方です。ベンチャーキャピタルというビジネスは、将来大きく成長する分野だとおっしゃったのです。実際、3つの事業会社で経営企画の責任者としてやってきたので、事業会社の価値向上に努めてきた経験はあるわけです。コンサルティング業であれば、すぐにでも始めることはできたので、そうした経験を生かして、お金、アライアンス、事業計画、事業戦略の策定などのすべてをトータルにサポートできるベンチャーキャピタルを創ろうという理念をまとめていきました。
【森本】 実際にベンチャーキャピタルで起業しようとしたとき、最初にお考えになったことは何ですか。
【萩原】 それまで事業会社で経営企画のポジションにいた経験から、金融機関の方や、投資関係のベンチャーキャピタル、投資ファンドの方には、どうしても堅苦しい印象を持っていました。まず、その部分は少なくとも変えられるのではないかと思いました。あと、事業会社の立場からすると、金融機関に対しては、相談できることと、できないことの線引きをして接するところがどうしても出てきます。そうした事業会社側がもつバリアみたいなものを払拭させた、開かれた関係性を持てる投資ファンドを目指したいということも考えました。
【森本】 それが2週間お考えになっての結論ですね。
【萩原】 はい、そうです。そうした考えから、何らかの結果は出せるのではないかと決断しました。




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