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VC vision
前編 後編
第22回 ベンチャーキャピタルというベンチャービジネス 後編 企業価値への投資
グロースパートナーズ株式会社のGPファンドで大事なことは、
企業成長に具体的に役立つために、
自分たちのもつシナジーが投資先とマッチしているかどうかだという。
同社の案件の発掘法、審査、投資決定までのプロセスで、
徹底して検討されることは、企業成長実現の可能性を探ることである。
後編は、新しい時代のベンチャーキャピタルの可能性を秘めた
グロースパートナーズ株式会社の、そのユニークな投資眼を追っていく。
interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
パートナーズ投資先事例
上場して高く売れれば終わりという考え方はしない

【森本】 各企業の投資ステージはどうのようになっていますか。
【河野】 これもさまざまです。社長の年齢や社歴、企業規模もいろいろですし、IPOまでの目標期間も投資先ごとに違います。中には、IPOはしないと決めている企業もあります。
【森本】 ハンズオンはどういう支援スタイルで行っているのですか。
【萩原】 ハンズオンとしては、事業戦略の相談やアライアンス紹介など、企業価値の向上につながることをできる限り行っています。
【森本】 ハンズオンで強みとするポイントは何ですか。
【萩原】 そうですね。私自身が事業会社時代に担当していましたのは、経営企画ですが、その延長で計画的な資金調達にも関与していました。ですから、銀行融資でいくのか、増資でいくのかといった判断から、銀行、証券会社への橋渡しといったことも、ハンズオンとして行っています。
【森本】 投資先には、他のベンチャーキャピタルも入っているのですか。
【萩原】 当社だけの投資案件が3社で、他のベンチャーキャピタルも投資している案件が3社あります。
【森本】 ベンチャーキャピタルからの案件紹介はありますか。
【萩原】 はい。
【森本】 投資先には役員として入っているケースもあるのですか。
【萩原】 2社に役員として入っています。
【森本】 今後の方向性はどのように考えていらっしゃいますか。
【萩原】 ファンドとしての方向性は、事業会社のためになることが実現できそうでなければ投資しないというスタンスで、それを第一にやってきていますから、それを継続していくことだと思っています。上場して高く売れればそれで終わりだ、という考え方もしていません。
【森本】 ファンドの投資期間は何年ですか。
【萩原】 10年間です。2006年2月からですから2016年までです。1号ファンドで実績を出すことで、2号ファンドへと進めていけたら、というのがいまの段階です。
【森本】 投資はあとどれくらいで終了の予定ですか。
【萩原】 とくに期間は決めていませんが、最初の4、5年で投資を終えようと考えていますので、あと2、3年といったところですね。
【森本】 御社の収益構造には、コンサルタント料が結構なシェアを占めているのですか。
【萩原】 結構というほどではありませんが、コンサルタント料を頂戴している案件もあります。これも、投資先によってまちまちですが、投資シェアが低いとコンサルタント料は発生して、シェアが高ければ無料という場合もあります。

投資先企業の関係者であることに喜びをもてる

【森本】 投資対象の理想形というのは、どういう企業ですか。
【萩原】 創業者の方がどれだけ執念を持って事業を行っているか、ということが最も大きい点だと思います。昨年までIPOの基準がゆるくてIPOを目指すといえば、資金が集まりやすい状況があったと思います。そうすると、上場するといいながら、そんなに上場する気がなくて、資金をたくさん集めて、創業社長がかなりの給与を取っていて、企業が倒産しても自分は損をしないというような企業もよく見かけました。ですから、社長や役員の報酬は低いほど会社に利益が残って、企業価値も高まるわけです。社長の給与は生活ぎりぎりにしても、企業価値を高めてIPOへの意気込みを強く持ってやっている社長がいたら、それは、投資を検討するに値する企業だと思います。
【森本】 投資先の事業哲学や事業モデルなどについては、どのようにお考えになりますか。
【萩原】 そうですね。とくに事業モデルについての基準はありません。国内の企業に限定しているわけでもありませんし、永続性についても何年以上という規定を設けていることもありません。投資先の企業には、我々も利害関係者として関わることになりますので、その企業の関係者であることに当社が喜びをもてることができる企業であることが大事だと思います。企業を見るときは、利益を上げているからそれでよいということではないと思いますから、むしろ、この事業は誰の役に立つのか、ということを考えます。IPOはしないといけないということでは必ずしもありませんし、上場企業に対しても投資するポジションを持っています。そういった意味では、何でも対象になるということになってしまうのですが、タバコ、ギャンブルといったところへの投資は控えることになると思います。やはり、社会貢献性が高い事業や企業へ積極的な投資を行っていきたいと考えています。
【森本】 萩原さんはまだ30代ですが、団塊ジュニアの世代も金融の世界で活躍をし始めています。そういう若い世代に、今後どういう可能性を感じていますか。
【萩原】 団塊ジュニアといわれる人たちは、20代から40代まで結構幅が広いのですが、これまでの旧来の金融機関のシステムで育ってきた世代とは違いますので、直接投資を積極的に行える感覚を持っていると思います。ITの世界などでみられるように、ベンチャーの世界でも新しいビジネスを起こしていくのは、そういう若い世代の人たちですから、ベンチャーキャピタルの側でも、これから若い世代が第一線にどんどん出てくると思います。これまで長く閉ざされた市場にあった日本の直接金融の世界は、こういう若い世代で作られていくのではないかと思います。私も2005年12月に、ようやく事業をスタートさせたばかりですが、何がしかの足跡が残せるように、努力していきたいと考えています。



インタビューを終えて

ベンチャーキャピタルや金融機関での実務経験をまったく持たない若者のベンチャーキャピタル業界への参入は、まったく新しい事例である。今回、未経験のままベンチャーキャピタルで起業した萩原義行氏から、金融機関出身者では持ち得ない視点が随所に語られるのを聞いて、やはり、新しい時代を切り開くには、若い世代の力が必要なのだという思いを抱いた。そこにあるのは、ひとつの野心であり、ひとつの挑戦である。若いベンチャー起業家が抱く夢を、こうした若者が支援していく構図が生まれたとき、日本のベンチャーキャピタルは、確実に変わっていくだろう。期待を込めて、今後のグロースパートナーズの投資活動を見続けていきたい。

次号第23話(2008年1月9日発行)は、 株式会社TNPオンザロード 代表取締役 山下勝博さんが登場いたします。


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