【森本】 投資対象の理想形というのは、どういう企業ですか。
【萩原】 創業者の方がどれだけ執念を持って事業を行っているか、ということが最も大きい点だと思います。昨年までIPOの基準がゆるくてIPOを目指すといえば、資金が集まりやすい状況があったと思います。そうすると、上場するといいながら、そんなに上場する気がなくて、資金をたくさん集めて、創業社長がかなりの給与を取っていて、企業が倒産しても自分は損をしないというような企業もよく見かけました。ですから、社長や役員の報酬は低いほど会社に利益が残って、企業価値も高まるわけです。社長の給与は生活ぎりぎりにしても、企業価値を高めてIPOへの意気込みを強く持ってやっている社長がいたら、それは、投資を検討するに値する企業だと思います。
【森本】 投資先の事業哲学や事業モデルなどについては、どのようにお考えになりますか。
【萩原】 そうですね。とくに事業モデルについての基準はありません。国内の企業に限定しているわけでもありませんし、永続性についても何年以上という規定を設けていることもありません。投資先の企業には、我々も利害関係者として関わることになりますので、その企業の関係者であることに当社が喜びをもてることができる企業であることが大事だと思います。企業を見るときは、利益を上げているからそれでよいということではないと思いますから、むしろ、この事業は誰の役に立つのか、ということを考えます。IPOはしないといけないということでは必ずしもありませんし、上場企業に対しても投資するポジションを持っています。そういった意味では、何でも対象になるということになってしまうのですが、タバコ、ギャンブルといったところへの投資は控えることになると思います。やはり、社会貢献性が高い事業や企業へ積極的な投資を行っていきたいと考えています。
【森本】 萩原さんはまだ30代ですが、団塊ジュニアの世代も金融の世界で活躍をし始めています。そういう若い世代に、今後どういう可能性を感じていますか。
【萩原】 団塊ジュニアといわれる人たちは、20代から40代まで結構幅が広いのですが、これまでの旧来の金融機関のシステムで育ってきた世代とは違いますので、直接投資を積極的に行える感覚を持っていると思います。ITの世界などでみられるように、ベンチャーの世界でも新しいビジネスを起こしていくのは、そういう若い世代の人たちですから、ベンチャーキャピタルの側でも、これから若い世代が第一線にどんどん出てくると思います。これまで長く閉ざされた市場にあった日本の直接金融の世界は、こういう若い世代で作られていくのではないかと思います。私も2005年12月に、ようやく事業をスタートさせたばかりですが、何がしかの足跡が残せるように、努力していきたいと考えています。
|