2008.12.24update 起業家・ベンチャーキャピタル・投資家を繋ぐコミュニティ・マガジン

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VC vision
前編 後編
第34回 官民一体のベンチャー投資 前編 日本にもベンチャーを根付かせたい
新規事業投資株式会社は、
政府系金融機関である日本政策投資銀行系列のベンチャーキャピタルだ。
従来、産業界への長期融資を担ってきた日本政策投資銀行が、
直接金融部門であるベンチャー投資を取り組み始めたいきさつと、
その社会的意義について、取締役投資部長の酒巻弘氏に話をうかがった。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
投資先事例

スタートアップステージへ投資する

【森本】 ファンド展開はいつごろから始めておられるのですか。
【酒巻】 ファンドは、日本政策投資銀行と当社の二人組合とする新規事業投資1号投資事業有限組合を2006年に立ち上げています。それ以前の当社の投資活動は主に1996年の時に集めた株主からの出資金を、ベンチャー企業へ直接投資するという投資形態をとっていました。
【森本】 御社の場合、ベンチャー企業へ直接投資する一方で、ベンチャーファンドへの出資もしていたとうかがっていますが。
【酒巻】 はい。2000年と2001年に2回増資を行っているのですが、この時の資金でインキュベーションファンドの展開を始めています。この頃にはもうすでにベンチャーキャピタルによるファンドは数多く誕生していたのですが、スタートアップステージへ投資するベンチャーキャピタルやベンチャーファンドがほとんどない状態でした。そこで、スタートアップに焦点を置いたベンチャーファンドを政策的にバックアップする目的で始めたものです。スタートアップのベンチャーに特化したベンチャーファンドへ当社の資金を出資していくスタイルで活動を行っています。これが、当社がインキュベーションファンドと呼んでいるファンドへの投資活動の概要です。具体的には、アイティーファームというベンチャーキャピタルが運営するIT分野に特化したアイティーファーム1号、2号と、バイオテック・ヘルスケア・パートナーズ(現ビー・エイチ・ピー)というベンチャーキャピタルによるバイオテクノロジーに特化したバイオテック・ヘルスケア1号、そして、イノベーション・エンジンというベンチャーキャピタルが組成したナノテクノロジーに特化するクリティカルテクノロジー1号という各ファンドに当社として出資しています。
【森本】 なぜ、独自にファンドを組成しないで、他のベンチャーキャピタルのファンドへの出資というスタイルをとられたのですか。
【酒巻】 当社は、日本政策投資銀行をバックボーンに持っており、金融投資家としてのノウハウはあるのですが、スタートアップへの投資をするには、事業投資家としてのノウハウが、やはり必要です。それには、外部の事業経験のある人たちに担当してもらうことが有効だという判断です。

チームアップをしてファンドを作る

【森本】 この3種のファンドへの投資が決まった理由は何ですか。
【酒巻】 一番重要だったことは、リスクの大きいアーリーのステージにチャレンジしていただけるファンドであることですね。と同時に、ファンドの担い手がそれぞれの分野でのエキスパートとしての実績を持っていることです。
【森本】 このファンド投資には、自らファンドの選定に動いたのですか。それとも先方からの持ち込み事案だったのですか。
【酒巻】 そこは、案件開拓の話とも関係してきますが、日本政策投資銀行や新規事業投資が活動していく中で、日ごろ培ってきたネットワークの中から出てきたものです。
【森本】 その際、候補となるファンドはいくつくらい上がってきましたか。
【酒巻】 シード、スタートアップに特化して投資するファンドは、非常に少なかったですね。ですから、我々はすでにあるファンドに出資したのではなくて、スタートアップへの投資に熱意のある人と一緒にチームアップをしてファンドを作ったのです。これは、我々にとっても手作りのファンドになるものです。
【森本】 なるほど。しかし、アーリーへ特化することは、リスクも大きいと思いますが、そういうファンドが組成できた要因はどこにあったのでしょう。
【酒巻】 おそらく、大きくは二つの要素があったと思います。まず、日本政策投資銀行サイドで、これは日本の産業界にとって必要だという確信を持っていたということです。ここが成立しなければ、次のステージにいくベンチャーは生まれないだろうという確信ですね。シリコンバレーでも、いろいろなベンチャーキャピタルがある中で、アーリーに資金を出す人たちがエンジェルやベンチャーキャピタルという形でいるのです。これは一つの成功モデルとして成立しています。逆に、ファンドを組成して運営するGPサイドでは、シリコンバレーで活躍していた人やシリコンバレーでアーリーの成功例を見てきた人たちが主体になっています。日本にも技術ベースはあるので、こういうアーリーに投資する枠組みを作れば、大企業とは違ったスピード感で成長していくベンチャーの育成が可能だという展望を持っているのだと思います。この二者が、うまいタイミングでファンド形成へと結び付けられていったということです。
【森本】 そのファンドは御社だけではなく、他の投資家も投資されているのですか。
【酒巻】 ええ、投資しています。ただ、日本政策投資銀行が当社を通じて出資した資金がかなりのシェアを占めています。当然、みんなリスクの高い投資であることを認識していますから、他の投資家たちの出資金はそれほど大きなものにはなりません。それぞれアーリー投資の必要性はわかっていても、果たしてどれだけ成功するかはわかりませんからね。現在、四つのインキュベーションファンドのうち、一つのファンドはもうクローズしていまして、リターンもかなり出ていますから、このモデルもきちんとしたGPが運用して、タイミングさえ合えば、リターンをあげられるのだろうと思います。とりあえずクローズしたファンドはまだ4分の1の段階ですが、実績は作れたと思っています。
【森本】 そのクローズしたファンドのGPの人は、2号ファンド、3号ファンドと手がけているのですか。
【酒巻】 はい。その実績をもとにして、次のファンド展開を行っています。
【森本】 そこに御社は投資しないのですか。
【酒巻】 これは、2000年、2001年の段階での日本政策投資銀行の予算があって出資したものです。その資金は全部投資し終わっています。
【森本】 一つの役割を終えた段階ということですね。
【酒巻】 しかし、四つのインキュベーションファンドのGPたちは相当に苦労をしていることは事実だと思います。スタートアップベンチャーを一緒になって育てていくのは、大変な労力がいることですし、日本にはそういうベンチャーキャピタルが少ないですから、ある意味自分でモデルを作っていくという苦労もあったと思います。


後編 「継続する投資を」(12月17日発行)へ続く。


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