当時の機械工具商というものは、ほとんどがメーカーの販売代理店だったんですね。それに対して、ユーザーの購買代理店をやろうと思い立ったわけです。そもそもわが国の産業構造っていうのはすべからく物不足時代にできた仕組みなんですね。だから、物を作ることが最優先しているわけです。そこから発展していって、供給側の論理であらゆる商売というものができあがっているのです。それを消費者側の論理に変えていこう、というのがマーケットアウトの基本となる考え方ですね。
僕が学生時代を送った1950年代から60年代は流通革命の時代なんですね。関西ではダイエーの中内(功)さんが立ち上げた主婦の店「ダイエー」、東京・北千住ではイトーヨーカドーの伊藤(雅俊)さんの洋品店「羊華堂」、四日市では今のイオングループの岡田(卓也)さんの呉服屋「岡田屋」といった会社が、この流通革命の波に乗って大変な勢いで伸びていき、これらを目の当たりにしたことで、ずいぶん勉強させていただきました。
そもそも購買代理店という発想は、当時ベストセラーになった東京大学の林周二先生が書かれた『流通革命論』(中公新書)の中にすでに登場していたものなのです。ただ、あくまでも当時の流通革命は消費財におけるものであって、購買代理店そのものは日の目を見なかったのです。 |