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Vol.002 株式会社TSUNAMIネットワークパートナーズ 代表取締役社長 呉 雅俊第4話 投資家としての信念
コラム4“Exit” パーソナル・データ(4)
マーケットへのポテンシャル
 ベンチャー起業家の中には、マーケットのことが頭にない状態で「投資をしてほしい」と言ってくる人がいます。どこに売りに行くのか、誰に受け入れられるのかを考えずに来るのです。ベンチャーキャピタルが投資するかどうかを判断する最も大きなポイントは、目指すマーケットへのポテンシャルがあるかどうか、将来の絵が描けるかどうかという点です。いくらユニークなビジネスモデルでも、マーケットが見えないかぎりは投資の決断はくだせません。
  しかしマーケットの見方は読みにくいというのも事実です。私たちは「ある」「ない」「大きい」「小さい」などを独自に判断していますが、これが間違っていることだってあります。実際にビジネスを始めてみて違っていたこともありました。その時は調整する必要が当然出てくる。しかし、そんなときでもマーケットの動く方向性を確認し続けるということは忘れないでしっかりと持っている必要があります。また、間違えたとしても、そこから「何か」を学びとることができればいいのですから。

真実を語れるベンチャー企業に
 数字が伸びない、頭打ちになってしまうというのは、企業の発展段階には良くあることです。たとえば、事業計画を立て、その目標を達成できなかった。そんなときちょっとした嘘をつきたい衝動に駆られることがあります。しかし、それは絶対にしてはいけないことです。目標を達成できなかったなら、とことん突き詰めてどこが間違っていたのかをしっかりと分析し公表したほうがいい。するとちゃんと評価してくれる金融機関もあります。「この会社は自分の間違いを修正していく力を持っている」と判断して、逆に高い評価を得られる場合もあります。
  ベンチャー起業家にはかならず、なぜその事業をやりたいのかと訪ねるのですが、中に「社会貢献をしたいから」と答える方がいます。しかし、私は、「リターン」を生み出す企業活動そのものが社会貢献だと思っています。ビジネスにおいて一人勝ちする企業はじつは生き残れない。サービスが売れているということは、誰かが喜んでくれている、社会に必要とされているということで、それこそがビジネスなのです。つまり顧客や社会との間にWIN-WINの関係を作ることです。そのなかでリターンを出すことが本当の社会貢献ではないでしょうか。そこに行く前に「社会貢献」を語る人は、どこか順番を間違えているとしか思えませんね。(了)

次号(5月3日発行)は、グロービス経営大学院 学長兼グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナーの堀義人さんが登場いたします。



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