それから、期日が迫っていることもあってあわただしく留学の準備にかかりました。ところが、ボストンに向けて飛び立った飛行機の中で、ふと我に返って考え込んでしまったのです。「僕はそもそも何をするために留学するのだろうか」と。じつは「留学する」という目標はあったのですが、何のために留学するのか、何を学ぼうとしているのかは、まったく考えていなかったことに気が付いたのです。お恥ずかしい話ですが、留学することそのものが目標になっていたのですね。それじゃあ5月病になる新入社員を笑えません。
ともかく行きの飛行機の中で、必死に考えました。それで3つの目標を自分に課そうと結論づけたんです。「経営学を体系的に学ぼう」「様々な人とグローバルな人的ネットワークを作ろう」「多くの地域を見て回ろう」。
ビジネススクールというものは日本の大学とはまったく違っていました。まずびっくりさせられたのは、授業開始の50分も前なのに、ほとんどの席が学生で埋まっていることでした。学生たちが先生の目に付きやすい場所の「席取り合戦」をしているのです。授業中も発言を求めてすぐに40人から50人の手が挙がるわけです。学校側もこうした競争を奨励していました。競争が切磋琢磨を促し、精神的にも優秀な人材を育てるという市場主義的な考え方がそこにはあるわけです。 |