グロービスは、創業から今まで、何のトラブルもなく順調に成長できたと言いたいところですが、実際はそうでもありませんでした。創業当初は資本金で何とか食いつなぐという状態でした。会社が資金不足に陥り銀行に頭を下げて緊急融資をお願いしたこともありました。やはり頭で考えるのと、実際にやってみるのでは大きく違います。ベンチャー企業というのは障害の連続でした。これなら何とかやっていけるかなと思えるようになったのは、創業から半年ほど過ぎてからでした。
でも今から考えると大きな賭をしたのは創業の時だけで、その後は勝算が高いと思われる分野だけにビジネスを集中してきました。たとえば、グロービスは「マネジメント(経営)」にこだわり続けています。出版物も出していますがこれは経営書だけです。学校も英会話教室やパソコン教室を開けば、もっと急速に成長できたかもしれない。でもそこには手を出さず「経営者教育」だけを行ってきました。「マネジメント」という知のコンテンツやインフラにこだわり続け、自分たちが戦えるフィールド、勝てるフィールドで戦ってきたのです。だからこそ、つぶれもせずにやってこられたのでしょう。
もちろん戦える範囲を絞っていると言っても、そこで旧態依然とした事業を行ってきたわけではありません。分野は絞り込んでいるが、その中で他社にはできない、独創的なサービス、他の真似を許さない独自性のあるビジネス展開を心がけてきました。そもそも、ベンチャー企業が他社の真似をしていたのでは資本力や人材などの資源に恵まれた企業に勝つことはできませんから。 |