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Front Interview
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Vol.003 グロービス経営大学院 学長 兼グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー  堀義人第3話 事業の成功に必要なもの
コラム(3) パーソナル・データ(3)
他の真似を許さない独自性
 グロービスは、創業から今まで、何のトラブルもなく順調に成長できたと言いたいところですが、実際はそうでもありませんでした。創業当初は資本金で何とか食いつなぐという状態でした。会社が資金不足に陥り銀行に頭を下げて緊急融資をお願いしたこともありました。やはり頭で考えるのと、実際にやってみるのでは大きく違います。ベンチャー企業というのは障害の連続でした。これなら何とかやっていけるかなと思えるようになったのは、創業から半年ほど過ぎてからでした。
  でも今から考えると大きな賭をしたのは創業の時だけで、その後は勝算が高いと思われる分野だけにビジネスを集中してきました。たとえば、グロービスは「マネジメント(経営)」にこだわり続けています。出版物も出していますがこれは経営書だけです。学校も英会話教室やパソコン教室を開けば、もっと急速に成長できたかもしれない。でもそこには手を出さず「経営者教育」だけを行ってきました。「マネジメント」という知のコンテンツやインフラにこだわり続け、自分たちが戦えるフィールド、勝てるフィールドで戦ってきたのです。だからこそ、つぶれもせずにやってこられたのでしょう。
  もちろん戦える範囲を絞っていると言っても、そこで旧態依然とした事業を行ってきたわけではありません。分野は絞り込んでいるが、その中で他社にはできない、独創的なサービス、他の真似を許さない独自性のあるビジネス展開を心がけてきました。そもそも、ベンチャー企業が他社の真似をしていたのでは資本力や人材などの資源に恵まれた企業に勝つことはできませんから。

好きなことで能力が最大限に発揮される
 グロービスはたったひとりでの創業でしたが、その後の成長は僕一人の力ではなく、講師のみなさんや社員の力があったからこそだと思っています。僕は、そんな社員達の満足度を高めようと心を砕いてきました。じつは創業して3年ほどたった頃、社内から「別の部門で働きたい」という声が聞こえてきたのです。採用の時には、「何をしたいのか」をしっかりと聞いた上で配属したはずなのですが、実際に働いてみると「自分にはちょっと向かない仕事だったかな」とか、「あっちの仕事もおもしろそうだな」と思う社員が出てきたわけです。
  その時最初に思ったのは、社員が不満を持ったままではいけないということでした。そこで思い切って社員の希望を100パーセント受け入れた大幅な人事異動を行うことにしたのです。全員に異動したい部署を聞き、その通りにしてみようと。よく考えるととんでもないことですよね。社内からは「そんなことをしたら会社が回らなくなる」という声も上がりました。しかし、それを押し切って実行しました。当然穴が開いた部署もありましたが、そこは新規採用で補充をしました。結果的にどうなったかというと、社員のモチベーションが大変上がったのです。組織内の不満もなくなり組織も上手く回りだしました。
  手を挙げて皆が好きなこと、やりたいことをやることで能力が最大限に発揮される。好きなことをやっているわけですから社内の雰囲気も明るくなりました。この人事異動で動いた人を見ていると、人と話すことが好きな人は営業部門に、マネジメントが好きな人はマネジメントに、教えることが好きな人は講師に、といった具合に、適材適所に収まっていったのは、大変興味深いことでした。
  もちろんこのような人事は、どんな会社でもできるというわけではありません。グロービスもまだ小さかった頃だからできたことかもしれません。しかし個人の希望を活かすというのは、今後の組織運営にとってますます重要になっていくものだ思えるようになりました。
(5月24日更新 第4話「企業の価値とは何か」へつづく)



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