リクルート用単行本がベストセラーとなり、三菱商事の中でもすこしは知られる存在になりました。しかし、中途採用だったものですから、「このまま広報室にいたのでは、うだつが上がらないぞ」と将来を心配してくれる人がいました。そして、その方から「推薦するからMBAに応募してみないか」と勧められたのです。
当時、三菱商事は毎年300人の新入社員を採用しており、その中から5人は海外でMBAを取得させ、あと20人には語学研修生としてロシア語、中国語、ポルトガル語などの特殊語学を学ばせることになっていました。語学研修のほうはまだハードルが低かったのですが、MBAは人気があり、非常な難関でした。しかし、幸いなことに社内試験に受かり、ハーバードの試験も突破することができ、2年間ハーバードビジネススクールに留学することになりました。
MBAといえば、今や日本でも名が知られるようになりましたけれども、当時は全然知る人さえいませんでした。日本におけるMBA取得者のパイオニアといえば、IBMの椎名(武雄・現日本アイ・ビー・エム最高顧問)さん、オリックスの宮内(義彦・現オリックスグループCEO)さん、キッコーマンの茂木(友三郎・現キッコーマン会長)さん、富士ゼロックスの小林陽太郎(現同社相談役最高顧問)さんあたりで、僕はそうした諸先輩の次の世代に当たるのです。
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