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Vol.007 株式会社ドリームインキュベータ 代表取締役会長 堀紘一第4話 喜びも悲しみも利益も分かち合う
コラム(4) パーソナル・データ(4)
ベンチャー企業へ偏見
 ボストン コンサルティング グループに勤めていた当時は、日本のベンチャー企業についてはそんなに興味を持っていたわけではありませんでした。昔なら優秀な人材と称される人々は、NTTとか東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)を目指したものです。目標を下げてもせいぜい朝日新聞や講談社まででした。ベンチャー企業というものには、捲土重来、一発当ててやろうとばかりに起業したというイメージがどうしてもありましたからね。これは僕だけではなく、日本の社会というのは昔からベンチャー企業をそのような目で見てきたところがあります。
  もちろんベンチャー企業の経営者の側にも問題はあります。利益を追求することしか考えていなかったり、IPO(株式公開)させることに必死になるような姿勢ばかりが目立ち、事業自体が話題を集めてマスコミに登場してくる人物でも、最低限の社会的ルールすら守れない人がいますからね。

信頼を得ることがビジネスの基本
 今のベンチャー企業家の人々に何が必要かというと、まず一番は「信頼」を勝ち得るということだと思います。伸び悩んでるベンチャー企業を見ると、「時間を守る」といった最低限のルールすら守れていないところが多い。日々の小さな行動の積み重ねが、信頼感をもたらし、お客様もついてきてくださるようになるのに、それができていないわけです。だから僕は彼らに、まず、信頼を得ることがビジネスの基本なんだということを、しっかりと伝えたいと思ってるのです。
  それをいくら言葉で言っても、現在のベンチャー経営者の多くは聞く耳を持てないようなので、まずはこちらがやって見せなければ、理解できないし納得もできないと思うのです。ご存じのようにベンチャーの経営者は上場というものに非常に価値をおいているわけです。そこで僕たちも「自分たちでやって見せるか」ということで、ベンチャーとして創業して上場までさせてみせればベンチャー企業家たちも納得するだろうと、ドリームインキュベータを一部上場まで持ってきました。背中を見せて教えるということです。

IPO(株式公開)は通過点
 僕たちが支援、育成していきたい会社とは、まず社長がお金儲けだけを目的にしていないこと、また企業は社会的な存在だとしっかり理解して、自分の会社を「良い会社にしたい」と思っていることが必要です。その上で「最低限一部上場を目指す」。そんな心意気を持った会社です。
  ですから、単にIPO(株式公開)だけ考えているような会社はお断りしています。IPOは難しそうに見えますけど、じつは簡単なことなのです。H.I.S.の澤田(秀雄・現H.I.S.会長)さんなどは「やる気のある人なら8割ぐらいはIPOできる」とおっしゃっていますけど、その通りでね。
  だからこそ僕たちが関わる会社には「公開で満足するのではなく、一部上場を目指そう」とはっきりと伝えます。一部上場こそが社会を歩くパスポートですからね。さらにその先は「日本を背負って立つような会社になること」とうるさく言ってます。
  そのためには何が必要かというと、まずは「人の役に立つ」ことですよ。さらに企業ですから「利益を出す」「成長する」ということも大切です。あとは社員や関わっている人すべてで、喜びも悲しみも利益も「分かち合う」ことです。




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