iSiDというのは、電通にあったIT関連の部局がGEと組んで分離独立した会社でした。電通というのはおもしろい会社で、ほとんど個人商店の集まりのようなものでした。外から見ると広告を売っているように見えるのですが、実は企画とか提案とか目に見えないものをお金に換えるのがビジネスの基本です。その中でもiSiDは新しい会社ということもあって、「何をやっても良い」「新人でも自分で考えて仕事をしろ」という気風が社内に強くありました。
電通には中興の祖である、吉田秀雄さんの作った社訓「鬼十則」というものがあります。有名な「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない」「取組んだら放すな、殺されても放すな」といったものです。iSiDにも、そういった雰囲気があふれていたわけです。若い僕でも自由にやらせてもらえました。何か売るものがあってそれを売るのではなく、新しいアイデアを提案してそれをクライアントに認めてもらい、それをビジネスに結びつけていくという仕事は、まさに自分にぴったりの仕事でした。
僕自身は、いずれは起業しようと考えていましたので、iSiDへの就職はそのための勉強のつもりだったのですが、ことのほか仕事にのめり込み気がつくと10年近くも過ぎていたのです。そして、その頃から、そろそろ新しいことに挑戦したいという思いが芽生え始めてきたのです。 |