私自身はヤマハを退社したあと、まず音楽か楽器の評論家になろうと思っていました。しかし業界誌の社長から「お前はたんなる批評家に過ぎない」と言われてしまいました。なるほどと思い、それで評論家の道は断念しました。
さて、ではどうするかと、旧知の神田楽器の社長の所に挨拶に行ったのです。そこで紹介されたのが富士弦楽器製造(現フジゲン)という会社でした。富士弦楽器製造の横内社長という方は、会っていきなり「あなたが居ると物が売れるらしいから、ここで儲かることを考えてください」と言って社長室を私に明け渡してくれたのです。
富士弦楽器製造というのは”グレコ”というブランドのエレキギターを作っている会社でした。しかし製造している人たちは、自分が作っているギターがどのように演奏されているのかを知らなかったのです。そこで工場に成毛滋(ギタリスト)さんを呼んで、実際に弾いているところを見てもらったり、成毛さん本人から「こんなぐあいに作ってよ」というアドバイスをいただいたりして、新しい商品を開発したのです。完成したギターには「ジミー・ペイジも成毛滋もグレコギター」というキャッチフレーズを付けて売り出しました。 |